中国で急増の「呼吸器疾患」に広がる大きな懸念 情報提供を要請するも、中国には隠蔽の前歴

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中国当局は今回、未知の病原体についての懸念を公に認めておらず、WHOの声明にも公には応じていない。中国当局は国内のメディアを通じ、呼吸器疾患の急増は中国が3年間にわたって続けてきた厳格なコロナ対策規制を解除したことが一因であるとし、冷静な対応を呼びかけている。

こうした規制によって通常なら冬に流行する他の感染症の多くが抑制されたことで、足元での呼吸器疾患の増加は劇的なものに見えているが、実際は例年どおりの状況だと、北京呼吸器疾患研究所の童朝暉所長は11月13日に中国国家衛生健康委員会が主催した記者会見で述べた。

気管支鏡検査が1日67回行われている

国家衛生健康委員会は、疾患急増に関する全体的な統計を発表していない。しかし地方政府の報告によると、安徽省のある小児病院では、通常なら1日に10回程度しか行われない気管支鏡検査が1日に67回も行われたという。

中国東部の杭州市の国営メディアは、1つの病院を訪れる小児外来患者が、コロナ規制がまだ続いていた昨年の3倍に増加したと報じた。その記事によると、病院を訪れた子どもの約30%〜40%がマイコプラズマ肺炎と診断されている。

ニューサウスウェールズ大学のマッキンタイア教授の話では、原因不明の肺炎の症例が現れること自体は新たな病原体発生の兆候とはならない。肺炎のような症状が見られるケースはかなり一般的であり、診断で原因が特定できるかどうかは、その国の監視・検査システムしだいとなる。

ほかの国々でも、パンデミック対策の規制解除後に新型コロナとそれ以外の感染症に感染する人が急増したため、中国でもこれと同じことが起こっている可能性がある。中国の医師たちは、今回の患者にはさまざまな感染症や薬剤耐性を持った感染症が見られ、それによって症状が悪化している可能性があると話している。

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