「わたしに死ねと?」70代ヘルパーが直面した悲劇 高齢者には厳しすぎる「住まいの問題」のリアル

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大崎さんは天涯孤独といっていましたが、離婚した奥さんとの間に1人息子の信二さん(仮名・46歳)がいました。そこで信二さんにお手紙を送ることにしました。

すると手紙を受け取ってすぐ、信二さんから電話がありました。自分が小学2年生のときに両親が離婚し、それ以降、父親とは一度も会っていない、
ということでした。どこに住んでいるかも知らず、何をしているかもわからない。亡くなったと知っても、何の感情も湧いてこないといいます。

「で、……俺に何しろと?」

信二さんからは、迷惑はごめんだよという感情が、むき出しに伝わってきました。私は信二さんに以下のことをお伝えしました。

●賃貸物件を引き継いで住む意向がないなら、解約の手続きをお願いしたいこと
●残置物が不要なら、所有権の放棄書をいただきたいこと
●車が残っているのだが、これをどうするか決めてほしいこと
●そして室内からは1000万円以上の残高のある通帳がでてきたこと

これらを伝えると、信二さんの態度が急に軟化した気がしました。

次の週末、信二さんは大崎さんが借りている部屋に来ることになりました。偶然にも信二さんの自宅から、電車で30分の距離です。こんな近くに別れた息子がいただなんて、大崎さんが生きていたらどう思ったでしょうか。

部屋をぐるっと見た信二さんは、何も要らないと放棄書にサインしました。もしかしたら写真などが出てくるかもしれませんが、それすら不要だといいます。長年存在すら記憶になかった「父親」に対して、今さら何かを知りたいとも思わない、そう口にした信二さんは、淡々としています。

親子といえども、2人の間に歴史がなければ当然のことかもしれません。

事故物件でも相続の対象に

信二さんは賃貸借契約の解約手続きをし、通帳を鞄に入れ、大崎さんの車に乗って帰っていきました。

今回、もし大崎さんが室内でお亡くなりになり、すぐに見つけてあげられず、特殊清掃が必要になれば、物件は事故物件となりました。そうなると家主側の損害たるや、数百万単位の相当な額になります。これらの賠償も相続人が引き継ぎます。

もちろん何もかも要らないと相続放棄することもできますが、その手続きをしなければ、責任を負うことになります。

事故物件にしないための見守り用の機器なども、安価なものがたくさんでてきましたが、その見守りのアラートを誰が受けるのか、という問題があるのです。365日、誰が対応してくれるというのでしょうか。そして何か起こっても、家族でなければ、室内に入室することもなかなか難しいものです。

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