秋本氏によると、速く走るためには大前提がある。「ピッチ×ストライド」だ。
「バッティングもそうですが、自分の体に近い場所で動作をしたほうが大きい力を出せますよね。走る場合、自分の体の真下に着地することによって、大きい力が出る。接地時間を短くし、いかに大きい力を地面に加えるかが速く走るためのポイントです」
こうした原則は、走る専門家である陸上選手なら当たり前のことだ。
「走る」という動作を専門的に学んでいない
対して、野球選手にはそうではない。
走るという動作を専門的に学んでいないことに加え、野球のコーチから「迷信のように言われる教え」が邪魔をしているからだ。「低く構えろ」「地面を蹴れ」というものである。
コーチは速く走らせようとして上記の指示をしているが、意図しないところに選手を導いてしまっている。秋本氏が続ける。
「サッカー選手の動きを見ていても、『なんでこんなに体勢を無駄に低くしちゃうんだろう』と思うことがあります。理由を聞くと、『高校時代にコーチから構えろと言われて、低く構えないとめちゃくちゃ怒られたんです』と。そのトラウマが残ってしまうわけです」
秋本氏は阪神で2016年秋から臨時ランニングコーチを務め、その評判を聞きつけた西武が2022年からスプリントコーチとして月2回招聘している。
今年、重点的に指導したのが新人のモンテルだ。
垂直跳び91.8cm、背筋力220kgというパワーと跳躍力を誇り、50メートル走は手動で5秒69を記録したこともある。昨年の入団テストを受けた26選手の中で、潜在能力を買われて唯一合格したのがモンテルだった。
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