ヘヴィメタルバンドANTHEMに学ぶ仕事哲学 音楽を30年続けられる情熱はどこにあるのか

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常見:まずは7月に開催される「HEADSTRONG FES.」が非常に楽しみです。バンドのラインナップを見た瞬間に、私は涙しました。まさかDOUBLE DEALERとSABBRABELLSという、伝説のバンドがこのフェスのためだけに再結成するとは。そして、世界標準のヘヴィメタルを演奏しているOUTRAGEが参加するのも嬉しいです。まさに、良い意味での「頑固者」が集まるフェス。いま、ロックフェスはアーティスト主催フェスが盛り上がっていますが、これはその中でもこだわりを感じます。

柴田:今回は僕らANTHEMが主催するフェスなので、僕らじゃないとやれないことをやろうと意識しています。今回復活する2つのバンド、そして同じく共演するOUTRAGEは僕も観たいし、お客さんにも観て欲しいですね。

常見:フェスはバンド同士のバトルの場でもあり、化学反応が起こる場でもありますね。よく、前座が他の出演者を食うフェス、そのフェスをキッカケに大ブレークしたアーティストなんかもいますね。フェスをきっかけに、新曲や新しいコラボレーションに繋がることもあるじゃないですか。

ちなみに、トランスのシーンで活躍するジュノ・リアクターは、参加した日本のトランス系のフェス、「武尊祭」をきっかけに和太鼓+ディジュリドウのアーティストGOCOO+GoRoと出会い、自分たちのアルバムでコラボしたり、自身が手がけた映画『MATRIX』シリーズの音源にも起用したりしたそうです。ここから何かが生まれると思うと、ワクワクしますね。

柴田:僕も着地ありきのフェスだとは思っていないですね。予定調和は、ゼロです。とにかく観てほしい。僕もファン目線でも、観たい。このお祭りが終わったときに、お客さんの中に、そして僕ら出演者の中にどんな感情が芽生えるのか、すごく楽しみにしています。

懐かしいメンツが集まりますが、同窓会をやるつもりはありません。解散、活動休止など、止まっていたバンドが復活するので、不安な人もいるでしょうけど、みんなすごいものを見せてくれると信じています。実は、SABBRABELLSのリハーサルを見せてもらったのです。彼らとは、80年代前半に、全国を車でツアーしていた仲間なのです。車が故障して、みんなで押したこともありましたね。そのリハですが、ものすごい熱ですよ。誰が観ても「いい意味で期待を裏切られた!」と言ってしまうような、そんなイベントにしますよ。

全曲再現ライブで、過去のアルバムに決着をつける

常見:今年はライブで5thアルバム『NO SMOKE WITHOUT FIRE』と6thアルバム『DOMESTIC BOOTY』を完全再現しましたよね。

柴田:20周年と25周年のときに1〜4thアルバムを再現したので、タイミングとしても、このアルバム2枚を30周年のライブではやるんだろうなと考えてはいました。ただレコード会社も移籍して、昨年、メンバーチェンジ(ボーカル森川之雄、ドラマー田丸勇が加入)をした後に、このアルバムをやるとなって、運命的なものを感じましたね。

常見:過去、多くのミュージシャンが一緒にANTHEMの歴史を作ってきましたし、それぞれの時代が好きですが、でも、今のメンバーが過去最高の布陣だと思うんですよ。見るたび、鳥肌が立ちますもん。再現するとなったとき、他のメンバーの反応はどうでしたか?

柴田:もう一も二もなく「やろう」と即答でしたよ。30周年というタイミングで、新生したANTHEMが挑戦するにはいちばんの企画でしたね。

常見:あの、今日は絶対にこの質問をしたかったんです。やや意地悪な質問で恐縮ですが、僕の解釈だと、この2枚に関して柴田さんは複雑な想いがあるのではないですか?やり残し感というか。

『NO SMOKE WITHOUT FIRE』はレコーディング終了後にギタリスト福田洋也が脱退。その後、即戦力として加入した中間英明は交通事故にあって活動が止まった上、その後、脱退。若き逸材、清水昭男が入った『DOMESTIC BOOTY』の発表後、解散することがなり、再結成まで時間が止まりました。アルバムの楽曲って、ライブを通じて磨かれていく部分があると思うので。はっきり言って、大変な時期だったと思うのですが。

柴田:うーん、鋭いですね。あの2枚はANTHEM初期の、若いながら精いっぱい作った作品だったんですね。それでもどこか煮え切れない思いがありました。だから僕はこの30周年というタイミングで、今の新しいメンバーで完全再現できたことが非常に楽しかった。やっと腑に落ちたという気持ちです。3月、4月のライブの後には、「君たちのおかげで、あの時代にひとつ決着がついた」と森川、清水、田丸に御礼を言いました。

常見:やっぱりそんな想いがあったんですね。当時のアルバムを今、このメンバーでやるのはとても意義があることだと感じました。なんというか、過去の心の中の忘れ物に決着をつけたというか。

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