通常冷凍では、食材と保存袋の間に空間ができ、食材が空気に触れています。この状態で冷凍すると、まず食材表面の水分が乾燥して水蒸気となって抜け、表面付近で乾燥が進みます。内部では水分が氷の粒となり、それが結合して氷がどんどん大きくなります。
一般的な家庭用冷凍庫では、緩慢凍結(ゆっくり凍っていく)になるため、必ずこの現象が起こります。そうすると、タンパク質が氷に押されてどんどん追いやられて、タンパク質同士も結合します。
これを解凍すると、タンパク質の結合はほどけずに、氷がとけた部分が空洞となり、いわゆる“す”が入った状態に。こうなると食感や歯ざわりが損なわれ、さらにはドリップが流れ出やすくなり、おいしさや品質が低下します。
対して、下味冷凍はどうでしょうか。
調味液で食材をコーティングすることで表面を乾燥から防ぎつつ、調味液に含まれる糖や塩分が中に染み込んでいきます。この状態で冷凍すると、表面からは水分が抜けにくく、さらに糖や塩分が水分を引きつけて食品中に大きな氷ができづらいため、元の組織の状態を維持しやすくなります。
さらには、栄養分やうま味成分が含まれた水分が食品内にとどまりやすくなるので、味や食感の低下を防げるというわけです。下味冷凍は、まさに肉の冷凍保存では理にかなった方法なのです。
下味冷凍5つの基本ルール
それでは、実際に下味冷凍のやり方の基本をご紹介します。筆者は5つのルールを守ることを提案しています。それが下記です。
①調味液で食材の表面をコーティングして冷凍する
②糖分を含む調味料を加える(みりんやはちみつがおすすめ)
③油分を含む調味料を加える(オリーブオイルやごま油がおすすめ)
④保存袋に入れたら、空気をできるだけ抜いて口を閉じる
⑤なるべく均等な厚さになるよう、薄く広げて平らな状態で冷凍
調味液で食材の表面を覆うことで、乾燥と酸化が防げるのは先述の通り。
保存袋に食材と調味液を入れたら、袋の上から軽く揉んで全体にしっかりなじませましょう。
勘違いされやすいのですが、ここで味つけのためにしっかり揉み込む必要はありません。味は冷凍時&解凍時に染み込みますので、あくまで全体に調味液を行き渡らせるのが目的です。逆に強く揉みすぎると、食材を潰してしまうので注意を。
調味液は、糖分と油分を含んでいるものをチョイス。糖分は肉に水分を閉じ込める保水効果があり、しっとりジューシーな仕上がりになります。油分は保油効果といって、表面を油でコーティングすることで乾燥を防ぐ効果が得られます。
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