旭日章スリランカシェフが捧げる日本食への敬意 「アジアのベストレストラン50」の和食伝道師

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実際に同店を訪れて驚いたことのひとつが、スタッフ数の多さでもあった。約100席に対してホールだけでも30人以上、調理場を含めると70名ほどが忙しなく動いていた。

客単価は1人あたり100ドル前後と、スリランカの物価を考えると非常に高額なこともあり、「料金とサービスレベルを考えるとこの人数でもギリギリ」だ、とダルシャンさんは明かす。日本の飲食業の常識で考えると、“多すぎる”ともいえる人員数にもこだわりがあるという。

「コロナ前でスリランカに来る旅行者が約200万人。その中でウチに来ていただける方は年間で約10万人と、非常に多くの方にお越しいただいている。飲食業は店の雰囲気、会話などのトータルでの満足度が大切で、ウチはサービスの質のためにもこの人数は必須なんです」

ミニストリーオブクラブ
(写真:ミニストリーオブクラブ提供)

日本の食文化を伝えていきたい

スリランカは欧州の植民地だった歴史の長さもあり、実は多くの食文化が交差する場所でもある。そんな中で、とりわけ日本の調理法や技術を重視する理由を尋ねると、こう答えた。

「スリランカはポルトガル人にはじまり、オランダ、イギリスといろんな国の文化がミックスされていますが、実は日本との関係性は非常に深く、経済的な支援だけではなく、病院やテレビ局、道路なども作ってもらい、日本という国へのリスペクトが深い。

僕も縁があって日本との関係ができたので、そういう日本の豊かな食文化や歴史も含め、国籍や人種を問わずお客さんには伝えていきたいんです。出汁のとり方1つとってもそう、四季の素材を活かすアイデア、包丁さばきの技術や保存法など、これだけの“食”が洗練された国は、世界中探してもほとんどないですから」

長らく続いた内戦に、2019年のISテロにコロナと観光客にとって決して“開かれた場所”ではなかったスリランカだが、今年に入り多くの旅行者が訪れる国に戻りつつある。その魅力の1つには食も大きく関わり、和食の概念も徐々に広まってきている。和の文化を心から愛するダルシャンさんには、今後生涯をかけて取り組んでいきたい目標もあるという。

「単なる食だけではなく、日本の文化を深く学べるような世界のどこにもないレストランを作りたい。それを必ず実現させます。僕の人生は、できるわけない、といろんな人から否定されることの連続でしたが、やりたいことは成し遂げてきたので自信はありますよ」

昨今の世界中で広がる和食ブームのなか、スリランカの地で独自のアプローチで和食と向き合うシェフの存在に、今後も注目していきたい。

ミニストリーオブクラブ提供
(写真:ミニストリーオブクラブ提供)
栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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