旭日章スリランカシェフが捧げる日本食への敬意 「アジアのベストレストラン50」の和食伝道師

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「僕のスタンスは、『食べることから料理を研究する』ということ。視察で日本のレストランを食べ歩き、そのレベルの高さに本当に驚いたんです。どんな食材を使用しているかを聞くため、スリランカの紅茶を40パックほど鞄につめて、料理人や卸しの方に話しを聞くために足繁く通った。

日本人は基本的に優しくて、スリランカ人の私にも仕入れから技術まで本当にいろんなことを教えていただけた。特に赤坂の鰻屋『重箱』さんに強い影響を受け、技術だけではなく、空間や雰囲気づくりも含めて多くのことを参考にさせてもらいました」

ミニストリーオブクラブ
(写真:ミニストリーオブクラブ提供)

日本での出店も視野

現在経営に関わるのは3つの和食レストランの他にも、スリランカ料理店やステーキ屋など多岐にわたる。そんな中でも、ダルシャンさんがシェフとして名声を得たのは、「ミニストリー・オブ・クラブ」の成功が大きい。

アジアを中心に世界に7店舗を展開し、来年2月にはオーストラリアでの出店も決定。日本でも六本木を中心に具体的な出店計画も立ち上がっているという。蟹やエビの専門店でもある同店だが、ここでも日本の調理法が活きているのだ。

シンガポールではクラブ(蟹)料理の店舗が増え、その系譜であるシンガポールのクラブレストランは日本でも近年出店が目立つ。これらのレストランで使用されるのは、主にスリランカで採れる「ノコギリガザミ」となる。日本では希少性が高いが、スリランカでの漁獲量は多い。この利点を活かし、ダルシャンさんは独学で学んだ「和」のアレンジを加えた。

「ウチのレストランは冷凍庫がないんですよ。蟹は生きたまま料理をはじめるなど、食材は基本的に朝届いたものを、その日のうちに調理して新鮮な状態で提供することにこだわっています。

そのインスピレーションは、江戸時代のお寿司屋さんから。さらにウチのソースは出汁を重視しており、蟹は黒胡椒で出汁をとる。エビも淡水エビを使用し、出汁は鶏ガラから。アサリなどの貝類も醤油バターがベース。日本の調理法を参考にしているのです。

ウチは旅行客が多いなかで、調理方法を聞かれると『日本の和食のフィロソフィー、テクニックを採用している』と伝えると、日本食の奥の深さに驚かれる方が本当に多い。そういった、より広義な意味でも、和食を広める貢献ができたらな、と考えているんです」

ミニストリーオブクラブ
(写真:ミニストリーオブクラブ提供)
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