柴田理恵が直面した往復6時間の「遠距離介護」 母が突然「要介護4」に。離れて暮らす娘の決断は

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そのときは正直、困ったなと思いました。

リハビリでどれだけ身体機能が回復するかわからない。

回復しても、いままでのように富山の実家での一人暮らしはきっと容易ではない。

やっぱり東京に引き取って、一緒に暮らしたほうがいいのではないか……。

仕事を辞めて親の介護をする人もいる。実際、そういう選択をした知り合いもいた。私もそうしたほうがいいのでは……。

そんな考えが自然と胸のうちに浮かんできました。

ですが、実は父が亡くなったときにも母に聞いたことがあったのです。

「東京で一緒に暮らさない?」と。

ただ、母からは「絶対に嫌だ」と断られていました。

母にとっては、生まれ育ったところが一番大事。

学校で教師をしていた時代からの大切な友人や知人がたくさんいるし、お茶や謡(能の声楽部分)を地域の方々に教えてもいましたから、ここでまだやりたいこともある。

だから富山の地元を離れたくない、と。

教師時代の柴田理恵さんのお母様と子どもたち

「あんたはあんたの人生を生きなさい」という母の言葉

そもそも自分の人生は自分のもので、あんたの人生はあんたのもの。

あんたが仕事を辞めたり減らしたりして、私の介護をするなんてことは考えてくれるな。あんたはあんたの人生を生きなさい――。

母は強い言葉で、以前からそう言っていました。

お互い大好きで、仲の良い親子だけれど、そこは違うんだよ、分けて考えないとね、というのが、すごくはっきりしているのが母なのです。

ですから私は、「富山で暮らし続けたい」という母の願いを叶えるため、今後のリハビリや退院後の一人暮らしを全力でサポートしようと腹を括りました。

生活拠点は東京のままで、仕事を続けながら、片道3時間あまりの遠距離介護を行う覚悟を決めたのです。

入院することになった母は、その状況でも「実家での一人暮らし」への復帰を希望していました。ですから、まずは母のリハビリやこれからの暮らしの活力になるよう、“ニンジン作戦”をすることにしました。

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