日本の「お金の教育」が子供に超悪影響な深いワケ 「投資される側になる」発想の欠如が国を傾ける

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そして、国レベルでも同じ過ちを犯している。

昨年、資産所得倍増計画を掲げた時はまだよかった。スタートアップを育成することにも力を入れようとしていた。「投資する側」だけでなく「投資される側」も育てることができれば、日本にGoogleのような会社を作ることも可能だ。

ところが、最近では「資産運用立国」と言い始め、投資するお金が増えれば成長できると言い始めた。投資するお金が増えたところで、投資される側がいなければ何も生み出さない。

個人の資金で日本株を買っても、大企業が新しく株を発行でもしないかぎり、その資金が企業に流れることはない。株の購入に支払った100万円は、その株を売った株主に流れるだけなのである。

「海外投資」が日本の将来に陰を落とすわけ

さて、岸田首相は海外の投資マネーを呼び込むと言っているが、お願いされる側のブラックロックが迎賓館での夕食会を主催したというのは不自然だ。ブラックロックが期待しているのは、日本の1000兆円以上のお金が「貯蓄から投資へ」流れることだろう。そうなれば、彼らの運用するお金も増え、手数料が彼らの懐へと入っていく。日本を代表する岸田首相は大事なお客様なのだ。

そもそも海外の投資家に投資してもらうこと自体が不自然だ。仮に、日本の企業が投資マネーを求めていたとしても、1000兆円の預金が眠っているのだから、わざわざ海外の投資マネーを呼ぶ必要などない。何度も繰り返すが、日本に足りないのは投資マネーではなく、新しい製品やサービスを生み出そうとする人たちの存在だからだ。

「何を言っているんだ。多くのお金が日本の株に向かえば、株価が上がるじゃないか」という人たちもいる。それもまた馬鹿げた話だ。

NISAには年間の上限がある。1年で1000兆円の預金が日本株などの投資へ流れることはない。ゆっくりと日本株の購入が進んでいく。あらかじめ株の購入がわかっていれば、海外の投資家は先回りして株を買っておく。国内の預金や海外の投資マネーによって株価は上がるだろう。値上がりしたところを、来年、再来年にNISA枠で株を買い続ける日本人に売ればいいのだ。こんなに簡単なゲームはない。

そして、日本の預金は海外への投資にも向かう。これもまた問題だ。

アメリカにはスタンフォードを出て起業した人たちや、ドル資金を必要とする新興企業がごろごろいる。彼らに資金を提供するためには、ドルを購入することになるから、さらに円安が進むことは避けられない。

そして、その投資が成功するとき、アメリカには第2、第3のGoogleやAppleが生まれている。投資ではもうかるかもしれないが、消費者は今まで以上にアメリカから輸入をしないといけなくなる。そこまで岸田総理はわかっているのだろうか?

新しい製品やサービスを作ろうとする若い人たちが育たなければ、国内産業はどんどん衰退していく。岸田総理は「お金」が投資できる環境を整備しようとしているが、それよりも重要なのは、若い人たちの「時間」が投資できるような環境を整えることだ。「投資される側」になることを金融教育で教える必要がある。

先日、自民党の西田昌司議員が興味深いYouTube動画をあげていた。“岸田総理に今すぐ読ませたい!!「きみのお金は誰のため」”というタイトルの動画だ。

総理にはいち早く読んでもらいたいものである。

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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