数年前、こうしたテクノロジーの波を受けて、メロニー氏はある大きなプロジェクトの指揮を任された。内容は、同社の配送センター2つにテクノロジープラットフォームを導入し、製造ライン、包装と箱詰め、発送待ち商品用のパレットまで自動で商品が運ばれるようにして、監督者が1人で済むようにしようというものだ。
このような転換を行えば、低価格で高品質な製品提供という約束を守り続けられることはわかっていた。しかしメロニー氏は、共に働く仲間たちが職を失ってしまうのではないかと恐れてもいた。
プロジェクトは順調に進行していったが、同時に不安も強まっていった。配送センターの効率が高まるほど、従業員は自分たちの仕事が時代遅れになることを恐れ、士気が低下していった。
そうして悪循環が生まれ、従業員の仕事に対する姿勢が悪化すればするほど、経営陣からはプロジェクトを早く進めるようにと圧力がかかった。そうすれば「不満ばかり口にする余剰人員」を削減して「損切り」ができるから、と。
望むのは誠実な会社の姿
メロニー氏はチームの仲間に対し、自分たちのポジションが失われないよう技術研修を改善すべきだと訴え、自ら指導を行いさえした。しかし上層部は、見込みのない従業員に救済措置を施しても意味がない、と関心を示さなかった。
メロニー氏は何度か訴え、上司にこのようなメールを送ったりもした。
「顧客への約束を守ろうとしているのは素晴らしいことです。でも、従業員への約束は守らないのですか? 従業員に対しては責任を持たなくてよいのでしょうか? 少しの努力で守られる雇用があるはずです。そのためなら私も喜んで助けになります」
しかし、追加のリソースを求める彼女の要求は聞き入れてもらえなかった。初めて私と話したとき、メロニー氏は以下のように語った。
「希望を持ち続けることがどんどん難しくなっています。テクノロジーが導入されて、配送センターは確かに素晴らしい進歩を見せました。しかし同時に、何年も共に働いてきた仲間の表情がどんどん暗くなり、不安に満ちていっています。1つの約束を守ることが、別の約束を破っていい理由にはなりません」
メロニー氏は、自分が信じるような、誠実な会社の姿を切に望んでいた。顧客と従業員、双方に対して誠実な会社の姿を。それを実現する道も見えていた。
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