50代で直面「両親の介護」を前向きに捉えるコツ 親が住む札幌に移住したが、同居は無理だった
ときどき姉と話すのだが、“ポジティブサポート”をやっていると、エベレスト登頂などのプロジェクトがずっと続いているような感覚がある。
僕らきょうだいは力を合わせて、自分の人生をも豊かにする行動だと感じながら父の冒険をサポートしてきた。ほかにも頼もしい遠征隊のメンバーや、シェルパ、登山ガイド、スポンサー、医師、メディア、そのほかいろいろな人が、父が登頂すること、無事に下山することを最大の目標に力を合わせた。
近年、僕らが取り組んでいる両親の介護、サポート活動は、その感覚に近いのだ。
今は、きょうだいのほかに、医師、看護師、ケアマネジャー、理学療法士、ほかにも多くの人の力を借りている。姉がケアマネジャーと細かいやりとりをしてリハビリのスケジュールを組んでいる姿は、エベレスト遠征の日程を組んでいるときと見事に重なる。
2023年8月末、足にしびれの残る障がいをもった父は、多くの仲間たちと一緒に富士山に挑み、自分の足とアウトドア用車椅子の併用スタイルで登頂に成功した。
そして下山後に父は、今後の目標を新たに宣言した。
その目標は、「99歳のときに、モンブランのバレ・ブランシェ氷河をスキー滑走!」すること。
ヨーロッパアルプスで最も高い山、モンブランのバレ・ブランシェ氷河のスキー滑走は、ヨーロッパスキーの醍醐味を味わえる究極のスキー。自然の作り出した山々に囲まれ、クレバスが点在する氷河のど真ん中を滑ることが出来る、山岳スキーの真髄だ。
父は、三浦敬三(雄一郎の父、僕の祖父)に続き、99歳でこの「モンブランのバレ・ブランシェ氷河でのスキー滑走!」に挑戦するつもりだ。
ただ、祖父・敬三との大きな違いは、父・雄一郎は「要介護4」を経験して、懸命なリハビリで“奇跡の回復”をしたものの、神経性の障害は完全には治らず、今も下半身に麻痺は残り、長時間に及ぶ活動は難しい状況だということ。
しかし、父はそれでも「これからの目標」は失わない。「100歳に向かって、のんびりとがんばりたい」と、新たなステージへの意欲を語っている。
親の犠牲になっている感覚はまったくない
少子高齢化が深刻化する日本では、介護というのは重い問題なのだと思う。
家族ごとに環境と状況が異なるので、すべて一概には言えない。我が家はきょうだいが多く、全員が健康だという面ではラッキーなのだろう。
ただ、どんな場合であっても、介護を自分だけが背負う十字架のように感じながら暗い気持ちで後ろ向きに取り組むのと、チームを組んで関係者全員で明るく前向きに取り組むのとでは、大きく違うのではないだろうか。
僕らには、親の犠牲になっている感覚はまったくない。親が生きている時間の中身も、自分の人生も同じように大切にしている。
むしろ、父が持っている“夢の力”が、自分たちの力にもなっているような感覚もあり、それぞれの仕事にも全力で取り組める。
父・三浦雄一郎の想いはシンプルだ。
「人間はいくつになっても、あるいはどんなハンディキャップを持っても、挑戦することができる」
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