50代で直面「両親の介護」を前向きに捉えるコツ 親が住む札幌に移住したが、同居は無理だった

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父はこの転居をすんなり受け入れてくれた。

問題は母だ。そこで、「お父さんの心の支えはお母さんですよ。お母さんがいてくれないと、お父さんはどこにもいけないし、何もできないですよ」という話をして、役割を与えることで理解してもらった。

姉と僕で、札幌周辺の10カ所以上を見てまわり、便利な部屋をおさえることができた(写真:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』)

2022年6月、父と母はサービス付き高齢者向け住宅で新生活を始めた。バリアフリー仕様で、キッチン、浴室などがついた普通の2LDKのマンションと同様の部屋だ。コロナ禍にあっても訪問は自由で、地下の駐車場の使い勝手もいい。

少し前までは攻撃的になっていた母も穏やかになった。やはり、父のそばにいると安心するのだろう。母の口からも「ここはいいところね」という言葉が出た。

ともに目標に向き合う「ポジティブサポート」

頸髄硬膜外血腫に倒れ、苦しそうだった父の手術が成功し、命が助かった時点で、心配していた僕らきょうだいは気持ちを切り替えた。

「お父さんもさすがにトシだし、これからは穏やかに余生を過ごしてもらう」と考えたのではない。

「どこまで戻れるかわからないが、少しでももとの三浦雄一郎に近づいてもらおう。山を歩き、スキーを楽しむ父に戻ってもらおう」と決めたのだ。

父・雄一郎は昔から名コピーライターだが、姉もそのDNAを受け継いだのか、何かを言語化するのが得意だ。僕らの両親への取り組みを「ポジティブサポート」だと言った。

単に前向きに、明るい気持ちで親を支えるという一方通行の関係ではない。状態の悪化を恐れ、あれもしてはダメ、これもしてはダメと、本人の希望・目標を否定し、ネガティブに縛りつけるようなことはしない。

老親とひとつのチームとして一体になり、共に目標に向き合い、それを妨げる要素を一つひとつ取り除くことをサポートする。それが“ポジティブサポート”だ。

姉が言語化することで、きょうだい3人で、共通する意識を持ちやすくなった。

父と母では状況が異なる。

父は、大雪山でスキーをしたい、富士山に登頂したい、といった明確な目標を持っている。僕らはそれを実現するために、困難に全力でぶつかる。

母も「船で世界一周したい」とか「温泉に行きたい」といったことを口にする。「それじゃあ行こう」と言うと、本人は尻込みするのだけど、できればそれも実現させてあげたい。

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