50代で直面「両親の介護」を前向きに捉えるコツ 親が住む札幌に移住したが、同居は無理だった

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父は2021年6月に東京オリンピックの聖火リレーランナーを務めた。そのためのトレーニングにも、移住したことで付き添えるようになった(写真:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』)

僕は北京オリンピックの解説の仕事が入っていたし、姉や兄もスケジュール調整ができなかったので「ショートステイ」を利用したのだ。

ところが、ふたりが一緒に入れる部屋が空いていなかったことから、夫婦で階が異なる別々の個室で過ごすことになってしまった。

父は標高8000mのテントのなかで何泊もしている人なので、環境の変化にことさら強い。世界有数のレベルかもしれない。老人ホームでの暮らしにはあまり気乗りしないが、僕らにも迷惑をかけられない、仕方ないという理解だった。

ところが、認知症の傾向がみられる母はそうではなかった。自宅を離れて、初めての老人ホーム。住み慣れない個室での生活に、せん妄のような状態になってしまった。

強制的に収容所のようなところに閉じ込められたように思ったようだ。

昼夜問わずいろいろな人に電話をかけて、「私は捨てられた」「もう死にたい」とネガティブな話ばかりをするようになる。

「これ以上、ここにはいられない」と父から悲鳴があがった。仕方なく1週間で自宅に戻らざるを得なかった。

両親が安心して健やかに暮らすにはどんな環境がいいか?  それを、考えなければならなかった。

父は孫たちをかわいがっていることもあり、僕の家族と一緒に暮らすことを望んだ。しかし僕が考えるに、それは現実的ではなかった。

もし、同じ屋根の下で暮らすとなると、認知症気味でイライラすることの多い母の存在が、妻や子どもたちにもストレスになるのがわかっていたからだ。母にとってもその環境はよくないだろう。

悩んだ末に、父と母の住み場所を決める

両親の住む場所を考えていたときに、テレビで父の旧友でもある俳優・歌手の加山雄三さんが生活支援サービス付きの高齢者向け住宅の話をしていた。

高齢者の暮らしを支えるサービスを提供する「ケアハウス」やサービス付き高齢者向け住宅(通称「サ高住」)は、原則はマンションのような集合住宅で、自由度が高い生活ができるといわれている。

「なるほど、これはいいかもしれない」

姉と僕は早速、ケアマネジャーさんに相談し、いろいろ情報を集めた。すると、望ましい条件を備えていたサービス付き高齢者向け住宅に近々、空きが出ることがわかる。父と母がふたりで同じ部屋に入れるようだ。環境も素晴らしかったし、ずっと父を診てくれていた病院がすぐ目の前にあるという立地も魅力だった。すぐにそこをおさえた。

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