「要介護4の父」と暮らす決断をした50代の模索 冒険家の父「三浦雄一郎」の大病から始まった

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逆風はつらいが、それは僕には変えようがない。そこで、空いた時間を有効に使おうと考え、以前より関心を持っていたビジョンを具体化させることにした。

山岳ガイドと「IOI」の資格を得ることである。

山岳ガイドの資格は「公益社団法人日本山岳ガイド協会」が認定するもので、文字どおり山岳ガイドの公的なライセンスだ。登山経験はそれなりにあったが、それを生かすためにきちんとした資格を持ちたかったのだ。

では、「IOI」とは何か?

近年では、障がいの有無や年齢にかかわらず、多様な人々がともに大自然を楽しむ取り組みを「インクルーシブ野外活動」と呼んでいる。前回(第1回)の原稿でも書いたが、「インクルーシブ」とは「多様な人々をすべて包み込む」といった意味もあるそうだ。

「IОI」は、こういった野外活動の指導員のことである。

たとえば、障がいがある人がいる家族の誰かがIОIの資格を得ることによって、アウトドア用車椅子や、専用のスキーなどの道具を用いて、家族みんなで野外活動を楽しめるようになる。

これは、父のような要介護になった人がいる家族やコミュニティにもいえることだ。

家族を連れて、老父母の住む街に移住

三浦豪太氏が五輪出場を果たしたモーグルも、子供の頃、札幌で覚えた体験がベースとなっている(写真:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』)

コロナ禍でもう一つ進めたことに、老親の住む街への移住がある。

もともと僕は札幌出身だが、アメリカ留学や選手生活を経て、逗子で家族と生活していた。だが、ひとりのスキーヤーとして、スキー場にもっと近い環境で生活したいという思いをずっと持っていた。また、親として3人の子どもたちも山やスキーが身近に感じられる土地で育てたいという理念も温めていた。

札幌に住めば仕事の幅を広げられつつ、両親をサポートできる。

住み慣れた逗子を離れ、両親のいる札幌へ。妻や子どもたちと相談し理解を得たうえで、僕は札幌に拠点を移すことになる。

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