U-MO走る倉吉市「ぼちぼち」な街づくりの可能性 グリスロが生み出す地域社会と観光の新たな姿

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国土交通省によれば、グリーンスローモビリティとは「時速20km未満で公道を走行できる電動車を活用した小さな移動サービスの総称」だ。さまざまな利活用の方法があり、例えば千葉県松戸市の事例を以前に記事化している。

ここからの市の動きはとても早く、ことの進め方としては正攻法で、街づくりを考えるうえで実に当を得ている印象がある。

2022年に就任した広田一恭市長。エリア20を含めたグリースローモビリティの導入に積極的な姿勢を示す。鳥取二十世紀梨記念館「なしっこ館」にて(筆者撮影)
2022年に就任した広田一恭市長。エリア20を含めたグリーンスローモビリティの導入に積極的な姿勢を示す。「鳥取二十世紀梨記念館 なしっこ館」にて(筆者撮影)

まず、合意形成のために、「観光まちづくりを考える会」を立ち上げた。ここには観光業、商業団体、地元住民、まちづくり団体、PTA、警察、道路管理者、交通事業者などが参加。WEBアンケート調査を実施したうえで、実際にグリーンスローモビリティを知ってもらうための地域試乗会を行っている。

第2期、計3つの実験を実施

倉吉市は、徹底した合意形成を目指して、汗をかきながら仕事を進めた。その結果を受けて、2022年3月に「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」の素案をまとめるに至る。

この素案は、単なる行政書類ではなく、各種データが分かりやすくまとめられた“皆の思いがこもった未来の街の設計図”となっていることが特徴だ。同年10~11月の2カ月にわたり市が独自に行った実証実験が、実りあるものになったのだと感じる。

この実証実験は、2カ月という十分な期間で行われ、かつ目的や内容を変えて前半の第1期と後半の第2期に分けて実施している点で、とても戦略的である。

「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」の策定に携わる、倉吉市総務部企画課・課長補佐兼企画係長の鳥飼真輔氏。倉吉市役所にて「くらすけくん」グッズを持って(筆者撮影)
「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」の策定に携わる、倉吉市総務部企画課・課長補佐兼企画係長の鳥飼真輔氏。倉吉市役所にて「くらすけくん」グッズを持って(筆者撮影)

グリーンスローモビリティや自動運転など、一般的な交通関連の実証実験は、数日間から長くても2週間程度の場合が多く、内容も複数の案件を同時に行う形式でないことが多い。それが倉吉市では、多様な内容を効率的に盛り込んで行われた。

具体的には、第1期(2022年10月1~31日/延べ3658人乗車)では、グリーンスローモビリティ(1周3.6kmと3.0kmのルートを日中それぞれ10便)と、市内周辺の循環する大型バスの定時定路線(1周7.8kmルートを日中16便)を同時に走らせた。

次いで、第2期(同年11月5~30日/延べ632人乗車)では、グリーンスローモビリティ2台で、3つの実験を行っている。

実験の1つ目は、白壁エリアのみを巡る、土・日・祝日のみ運行の定時定路線(1周1.6km・日中16便)で、予約不要のもの。

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