U-MO走る倉吉市「ぼちぼち」な街づくりの可能性 グリスロが生み出す地域社会と観光の新たな姿

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運転についても、ドライバー自らが自然な加速と減速を心がけており、特に停車する際のブレーキでは、車両の構造的に起こりやすい、いわゆる“かっくんブレーキ”を抑えるよう、丁寧な操作をする人が多い。

こうした目立たないところで“おもてなし”の精神が自然と広がっていることが、倉吉市という街の魅力の1つなのだろう。

要の1つ「エリア20」とは何か?

今、日本ではドライバーの高齢化や2024年問題をともなう公共交通や物流での人手不足が、社会問題化している。そんな中で、倉吉市が地元のタクシー会社やバス会社を支援し、若い世代をドライバーとして呼び込むことも考えられるのではないだろうか。

また、倉吉市は冬場の積雪が比較的多い地域なのだが、白壁土蔵群エリアなどは道幅が狭くて除雪車が入れず、人力による除雪作業を行っている。

グリーンスローモビリティを通年運行させるため、除雪を含めて他の地域から倉吉の街づくりを応援する人たちが集まり、それが雇用に結びつく仕組みづくりも考えられる。

U-MOの停留所。「のんびり」した雰囲気(筆者撮影)
U-MOの停留所。「のんびり」した雰囲気(筆者撮影)

理想論ではなく、「おもてなしに対する意識が高いこの街ならば、それが可能なのではないか」という気持ちを、U-MOに乗車しながら自然に抱いた。

「おもてなし」の意識は、自家用車やレンタカーで倉吉を訪れる人たちの中でも、「皆でこの街を大切にしていこう」という観点で共有できるのではないか。

それを具現化する方法の1つが、実証で用いられた「エリア20」だ。グリーンスローモビリティの最高速度である時速20km未満で、しかも「お出かけツアー」運行時に各所で一時停止しても、「のんびりいこう」という気持ちになってもらえるかもしれない。

古い町並みは道幅も狭く、グローンスローモビリティがぴったり(筆者撮影)
古い町並みは道幅も狭く、グローンスローモビリティがぴったり(筆者撮影)

市が把握している速報値では、エリア20内を走行している乗用車や貨物車の最高速度は“概ね時速20km台”だという。

すでに、白壁土蔵群エリアは「ゾーン30」を実施しているが、交通規制の有無にかかわらず、「もっとゆっくり走ろう」「少し離れた場所に駐車して、徒歩またはU-MOで街を巡ろう」といった、人々の行動変容が自然に起こることが望ましいと感じる。

今回の実証実験を経て、倉吉市は2023年11月にアンケート調査を取りまとめる予定だ。その結果を精査したうえで、2025年度からグリーンスローモビリティを購入しての社会実装の判断を下すことになる。

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