U-MO走る倉吉市「ぼちぼち」な街づくりの可能性 グリスロが生み出す地域社会と観光の新たな姿

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仮に社会実装が決定した場合、2024年度は今回の実証で走行したエリアとその周辺で、蓄積したクルマや人の移動に関するデータを活用する。

具体的には、日時によってエリア中心部の駐車場を有料化して付加価値を高め、周辺の無料駐車場への行動変容を促進させるために、スマートフォンアプリの拡充など、DX(デジタルトランスフォーメーション)をともなうインフラ整備などを進めるという。

また、2022年に実施した大型バスによる周回ルートについては、路線バスのルートやダイヤを一部変更して対応する可能性がある。

このように、「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」は、立案から社会実装まで効率良く話が進み、実効性の高い施策であると感じる。その理由について、私見として次の3点を挙げたい。

(1)鳥取県立美術館開業という目標があり、事業のバックキャストのイメージが掴みやすかったこと
(2)技術や法規改正などを優先するのではなく、「人中心」「地域社会中心」という目的意識を関係者全員が継続的に抱いていること
(3)当初の想定以上に、グリーンスローモビリティが「人と人」を結ぶ良き媒体になっていること

「しっくり」くるU-MOへの期待

今後の課題としては、事業性(マネタイズ)がある。アンケートで得た地元住民の希望料金から見て、単独事業として黒字にすることは難しいかもれない。

鳥取二十世紀梨記念館「なしっこ館」の中で遊ぶ子どもたち。地域社会の重要性を感じるスペースだ(筆者撮影)
「鳥取二十世紀梨記念館 なしっこ館」の中で遊ぶ子どもたち。地域社会の重要性を感じるスペースだ(筆者撮影)

だが近年、地域公共交通に対して、福祉や観光需要などの視点での社会インフラとして、市町村が運用コストの一部を負担することが一般化してきている。

生活の持続性が保たれ、また地域経済活動を支え、そして地域住民やそこを訪れる人が笑顔になることが、地域公共交通の役目であるという概念である。

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その視点で、倉吉市のU-MOは「しっくり」くる。「お出かけツアー」は、サブスクリプションでの仕組みも考えられるかもしれない。

「懐かしき頃を想い出す」倉吉。

また近いうち、のんびり気分でふらっと立ち寄ってみたい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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