こうした観光スポットは、東西約2.5km、南北500mほどのエリアに点在している。だが、それぞれを巡るためにクルマを駐める市営駐車場がエリア内に分散しており、利便性が悪く、観光客の市内滞在時間が短いことが長年、観光施策のネックとなってきた。
「クルマだと近いが、徒歩だとちょっと遠い」といった距離感だ。
特に休日は、赤瓦・白壁土蔵エリアに近い駐車場にクルマが集中してしまう。それが、倉吉市や商用関係者、地元住民の間で共通認識となっている課題であった。
倉吉市では、こうした状況を打破する観光環境の整備が必要であることは、もちろん理解している。また、街の魅力づくりをさらに進め、倉吉のファンやリピーターを増やして、できれば移住促進にまでつなげたい。そんなイメージも、持っている。
しかし、なかなか思い切った解決策を打ち出すことができないでいた。それが、“あるきっかけ”で事態は変わってきた。前述にように、鳥取県立美術館が2025年に開業することになったのだ。
年間約10万人の入館者が予想される美術館の設立が、地域住民や観光客の市内交通に対する意識変革を促す「よきタイミングではないか」という議論が、市役所内や市議会で持ち上がったのだ。
論点の1つが、観光を促進するための市内を周遊するモビリティだ。今、「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」として進められている。
地域住民との合意形成を徹底追求
「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」に至るまでの経緯を、もう少し詳しく時系列で見ていこう。
2020年、市議会議員の1人が石川県輪島市のグリーンスローモビリティの事例を現地調査し、同年9月の市議会で「こうしたモビリティを倉吉でも検討してはどうか」という趣旨の質問をした。これに対して、前市長が「市として調査する」と回答。
市は、グリーンスローモビリティの導入には地域住民などとの合意形成に十分な時間を取るべきだと考え、2025年の県立美術館開業から逆算したうえで「遅くとも2021年には調査研究を始めるべき」と判断。本件を2021年12月の市議会で検討し、2022年度の当初予算にあげた。
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