松戸市の小型電動車「グリスロ」が無料で乗れる訳 地域交通のジレンマを抜け出す成功例になるか

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タジマモーターコーポレーション「NAO-6J」を8人乗りにした松戸モデルの車両(筆者撮影)

秋晴れに恵まれた、2022年10月29日午前10時過ぎ。千葉県松戸市の熊野神社境内に、地元住民たちが合唱する「グリスロ賛歌」が響きわたった。松戸市河原塚地域での「グリーンスローモビリティ」の正式運行が大いに祝われたのだ。

グリーンスローモビリティとは「時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスで、その車両を含めた総称」(国土交通省)という、地域交通手段の1つである。通称「グリスロ」だ。時速20km未満とすることで、保安基準の緩和などが受けられる。

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グリスロは、すでに全国の観光地や離島などを中心に活用されており、タクシー会社やバス会社などに委託する有償旅客運送が、一般的な運営方法となっている。

一方、松戸市のグリスロ(以下:松戸モデル)は、松戸市が車両を購入して所有し、ドライバーは地域住民がボランティアとして参加。乗車料金を無料としているのが、特徴だ。

交通「空白地帯」もある松戸市

松戸市は、高度成長期に都心通勤者のベッドタウンとして急速に開発が進んだ自治体だ。実は、筆者は身内の墓が松戸市内にあることから、今回の松戸モデルで車両が走行する地域周辺は古くから知っており、時代とともに移り変わっていった様子を定常的に見てきた。

そんな松戸市は丘陵地帯であり、海抜は最低1.3m、最大34.0mと比較的狭いエリアで高低差が大きい。そうしたところに新興住宅地が広がり、またJR武蔵野線なども開通したことで、周辺にスーパーマーケットやファミリーレストランなどの商業施設が建設されていった。

地域住民が作詞作曲した「グリスロ賛歌」を式典に集まった全員で合唱する様子(筆者撮影)

市内の公共交通は現在、鉄道の駅が合計23あり、さらに路線バスと一部でコミュニティバスがある。しかし、公共交通の空白地域・不便地域も点在しているのが実情だ。

近年は、地域住民の高齢化が進んでおり、松戸市の高齢化率(人口に占める65歳以上の住民の割合)は、2022年3月時点で25.9%である。全国平均よりは低いが、市の全人口が50万人近いため、65歳以上の人口は12万8926人。また75歳以上は6万9289人と実数では多くなり、日常生活の中で移動に対して不便さを感じる人が、少なくない状況にある。

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