過疎/高齢地の「次世代交通」5年で見えた現実解 エボリューション大使として感じる果実と課題

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一般の乗用車を使った「近助(きんじょ)タクシー」が永平寺町で本格スタートした(筆者撮影)

福井県の北部、吉田郡にある永平寺町(総人口1万8077人、世帯数6564)で2022年10月3日、アナログな方式の新たな地域交通が動き出した。「近助(きんじょ)タクシー」だ。

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ドライバーの運転する車が自宅まで出向き、町内の病院やスーパー、公共施設等に連れて行ってくれるサービスで、町内の志比南地区(地域住民数1537人、高齢化率30.5%)と吉野地区(同1146人、33.7%)の2つの地区に導入された。

志比南地区では2021年12月~9月、また吉野地区では2022年1月~9月に試走を行っており、それぞれのべ2507人/1146人が利用。住民数を考えれば利用者数は多く、近助タクシーの需要が高いことがわかる。

アナログな理由は「電話+Excel管理」

近助タクシーは、道路運送法第78条に基づく「自家用有償旅客運送」を用いた地域交通だ。使用する車両は緑ナンバーのタクシーやバスではなく、白ナンバーの乗用車を使い、地域の住民がドライバーとなる。

料金は大人300円、中学生以下50円、未就学児は無料。また、1カ月乗り放題の定期券を4000円、11枚綴りの回数券を3000円で発売している。利用予約は、電話のみとなっている。

予約の電話を受けるのは、永平寺町が出資するまちづくり会社のZENコネクトだ。電話で受けた内容をExcelファイルに手動で打ち込み、ドライバーにメールするという、今の時代ではなかなかアナログな手法である。

「近助タクシー」の予約を担当するZENコネクト社内の様子(筆者撮影)

こうした自家用有償旅客運送は、2006年2月の道路運送法等の一部改正によって創設された地域交通の形態の1つだ。

国土交通省によれば、地域住民の移動手段を確保するうえで、一般旅客自動車運送事業者による路線バスやコミュニティバスなどの運用が困難な場合、地域の関係者の合意のもとで、市町村や特定非営利活動法人が国土交通省の登録を受けた場合に実施できると定めている。

主に、過疎が進む交通空白地域での交通手段確保や福祉を目的として運用されており、2018年度時点では、全国1724市町村中のうち26%にあたる440市町村で合計2852事例が存在する。つまり、永平寺町の近助タクシーのような地域交通は、決してめずらしい存在ではない。

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