過疎/高齢地の「次世代交通」5年で見えた現実解 エボリューション大使として感じる果実と課題
一方で地域住民側は、地域社会がこれからどのように変化していくのかを、事業者側に対して積極的に聞く姿勢を持つことも大事だ。
もう1つ重要なのが、現状だけではなく、5年後、10年後、20年後……と、未来の地域社会の姿をデータで裏付けながらイメージすることだ。それが例え厳しい状況を予測するものだとしても、現実から目を背けずにじっくりと議論を進めなければならない。そこで必要となってくるのが、3つ目のポイントだ。
(3)準公共データプラットフォームと皆が未来を見る目
永平寺町を始め、少子高齢化が大きな問題となっている地域は多い。現に、自家用有償旅客運送の場合、ドライバーは定年退職後の60~70代が担う場合が多く、次の担い手を早期に見つける必要に迫られている。
また、全国各地の実例を見ると、事業立ち上げ初期メンバーの「可能な限り貢献しよう」という意識が強過ぎることで、次の世代へのバトンタッチがスムーズにいかないケースも多い。
永平寺町の近助タクシーでも、「(われわれは高齢者としてはまだ)ちょっと元気。力の限り頑張りたい。(課題としては)いかに、次の世代に引き継ぐかだ」と、近い将来に自ら直面する課題についての声を聞いた。
行政側は、自家用有償旅客運送に限らず、地域交通のおかれた状況が変化する中で、ガイドライン作成や地域住民と意見交換をする場の設置が重要だ。課題解決を住民任せにせず、ある程度システマチックかつ持続的に活用できる仕組みづくりが必要である。
その基盤として有効なのが、デジタル庁が2025年をめどに導入を計画する“準公共分野”でのデータプラットフォームではないだろうか。
準公共分野とは、「防災」「健康・医療・介護」「教育」「こども」「インフラ」「港湾(港湾物流分野)」「農林水産業・食関連事業」、そして「モビリティ」の8分野を指す。これらが、スマートシティ(スーパーシティ)や取引(受発注・請求・決済)で相互連携する構想である。
全国の市町村が、こうしたデータプラットフォームを用いてそれぞれの地域交通を考えることで、地域住民との意見交換に対する視野と具体性が広がるはずだ。さらには、市町村間での情報・意見交換が積極的に進むことも期待できる。
地域交通が抱える課題は、各地域の社会実情によって千差万別だ。これからも永平寺町を含め、引き続き全国各地の現場を体感しながら、日本の未来について考えていきたい。
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