松戸市の小型電動車「グリスロ」が無料で乗れる訳 地域交通のジレンマを抜け出す成功例になるか

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ちなみに、市が購入した車両には、青色回転灯やソーラーパネルなど追加装着している。日中は乗客向けとして走行し、夕方から夜にかけては防犯パトロールカー(いわゆる青パト)として使われるのだ。また、防災時に携帯電話などが充電できる充電設備などの役目も持たせることで、地域社会に対する直接的な貢献をする。

ボランティアドライバーは90人超え

河原塚地域の正式運行向けたオープニングセレモニーでは、同地域のボランティアドライバー21人が紹介された。若い世代の参加者もいるが、平均年齢は61.7歳とかなり高い。この翌日、小金原地区(18町会)でもオープニングセレモニーが開催されたが、ボランティアドライバーの数は、地域が広いこともあり71人を集めた。

河原塚地域のボランティアドライバー21人が紹介される様子(筆者撮影)

地域住民がドライバーを務める自家用有償旅客運送の場合は、ボランディアではなく日当が支給されることが多いが、それでもドライバーは10人前後であることが多い。

ボランディアであるにもかかわらず、松戸モデルにこれほど多くのドライバーが集まったのは、松戸市の各地域が直面している厳しい社会現実に対する、地域住民の“当事者意識の高さ”によるものだろう。

なお、65歳以上のドライバーには、介護支援ボランティアポイントが付与される。こうした移動支援活動への参加がポイント付与の対象になることは珍しく、ここでも関係省庁と松戸市との連携の深さ、そして松戸市としての施策推進に対する本気度の高さを感じる。

一方で、気になるのは、運行における安全性であろう。ボランティアドライバーは、事前に座学と実走による松戸市独自の講習会を受講する。これは、所轄警察も参加して自動車教習所で実施されるもので、受講終了者には市独自の「松戸市グリーンスローモビリティライセンス」が発行される。

講習受講者に与えられるライセンス(筆者撮影)

松戸市福祉長寿部・参事監の中沢豊氏は「このライセンスを持つことで、ドライバーが安全運転に対する強い意識を常に持つことにつながる」と、市独自ライセンス制度の重要性を強調する。

ただし、松戸モデルの車両が走行する地域の一部は、駅周辺を含めた交通量が多い場所もあり、また住宅街の坂道では子どもの“飛び出し”の危険性もある。ボランティアドライバーには、かなり高いレベルでの安全運転意識と行動が求められることになるだろう。

よくある地方部や中山間地域の自家用有償旅客運送の場合、走行ルートは交通量が少なく、見通しがいい道が少なくないことを鑑みると、松戸モデルでは事故に対する潜在的なリスクが高いようにも感じる。

そう思っていた矢先、松戸モデルでさっそく事故が起こってしまった。

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