低価格競争に参戦し大谷翔平効果も不発に終わった伊藤園、巧みな値上げ戦略で回復してきたコカ・コーラ・・・両社の明暗を分けた決定的な差とは?

故郷である岩手県の盛岡駅から、アメリカはニューヨークのタイムズスクエアまで――。
2024年春、茶畑に立って空を見つめるメジャーリーガー・大谷翔平選手の姿が、国内外85カ所以上の街や駅を埋め尽くした。伊藤園の緑茶飲料「お〜いお茶」の広告だ。
2025年4月期のお〜いお茶は、まさに大谷選手一色だった。昨年4月末にグローバル契約を締結すると、2025年1月にはメジャーリーグ・ベースボール(MLB)、そして大谷選手が所属するロサンゼルス・ドジャースとも契約。テレビCMへの起用や、パッケージに写真をプリントした期間限定商品の発売など、大規模な宣伝を積極的に仕掛けた1年だった。
お茶の低価格競争が止まらない
昨シーズンは50本塁打と50盗塁を達成する前人未踏の快挙を成し遂げた大谷選手だったが、そんな活躍とは裏腹に伊藤園の業績は低迷している。
6月2日に発表された2025年4月期決算。売上高は前期比4.1%増の4727億円だったのに対し、営業利益は同8.2%減の229億円に終わった。大きく足を引っ張ったのは、伊藤園単体の国内飲料事業だ。売上高は3348億円と横ばいで着地したものの、営業利益は149億円と同20%も減少した。
飲料業界では原材料高が続き、人件費や物流費が増加の一途を辿る。2025年4月期も、期初から厳しいコスト増に見舞われることは見通しており、価格改定で打ち返す計画だった。しかしながら、2024年10月に実施した値上げが思うように市場へ浸透せず、結果として大幅減益となってしまった。
決算発表翌日の会見で伊藤園の本庄大介社長は「緑茶や麦茶の競争はすごく厳しい。われわれも条件を下げて売ったりしたことはあった」と説明した。つまり、想定以上に卸や小売店に対する納品価格を下げた、またはリベート(販売奨励金)を支払ったということだ。
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