松戸市の小型電動車「グリスロ」が無料で乗れる訳 地域交通のジレンマを抜け出す成功例になるか

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そうした中で、千葉大学予防医学センター、地元高齢者の集う場である「河原塚南山ことぶき会」、そして松戸市役所が連携して、松戸市内での地域交通課題解決の方法を探った。

具体的には、2019年度と2021年度に国土交通省の採択事業として、ヤマハ発動機製のゴルフカートを使った実証試験を行い、地元住民の声をしっかりと聞いたのだ。

ゴルフカートを流用した地域交通は他の地域でも実証実験が行われた(筆者撮影)

「移動の確保」というだけではなく、地域社会のふれあいを大切し、さらに地域の人たちがボランティアドライバーを務める形で社会活動に参加することで、より多くの地域の人に「生きがい」を感じてもらおうと苦慮してきたという。

乗車料金が無料であるワケ

こうした話は、グリーンスローモビリティに限らず、全国各地で社会実装されている。地域の人が自家用車を使って旅客運送する、自家用有償旅客運送(道路運送法第78条)ついても、多くの地域で耳にする内容だ。そこで大きな課題となっているのが「どうやって、事業として継続させていくか」である。

松戸モデルは、地域住民がドライバーを務めるという点では自家用有償旅客運送と似ているが、料金は無料としている。それでも「持続的な運行が可能である」と、松戸市は考えている。背景にあるのが、「地域の互助」と市の福祉予算との組み合わせによる運営構想だ。

松戸市としては、主に高齢者の社会参加の促進(健康寿命の延伸・孤立化の防止)、また地域活性化による地域住民のコミュニケーションの促進を事業の目的に「グリーンスローモビリティ地域推進事業」として、補正予算を含めて3126万8000円を予算計上している。

車両後部に「低速電動車」であることが示される(筆者撮影)

その大部分は、車両(タジマ モーターコーポレーション製の電気自動車NAO-6J:2台、同8J:1台の合計3台分)の購入費用などの初期投資分であるが、ドライバーはボランティア活動であるため人件費は基本的に発生しない。また、駐車場の確保や電気代は地域が独自に対応するため、導入後にかかる維持管理費を低く抑えることができると見込む。

結果的に、高齢者の外出機会が増えてボランディアドライバーが生きがいを持つことなど、地域住民が健康で充実した日々を暮らせるならば、松戸市としては社会保障費の抑制にもつながるものと考えているのだ。

つまり、松戸モデルは事業化された交通手段ではなく、地域の福祉を考えた、道路運送法上の登録や許可が不要の「地域の互助」という考え方なのである。

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