昆虫のオスをメス化「共生細菌ボルバキア」の恐怖 「性決定システムの乗っ取り」を行う"侵略者"

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昆虫の性決定システムを乗っ取る細菌、ボルバキアとは(写真:sandpiper/PIXTA)
先行き不透明なVUCA時代、ビジネスを取り巻く環境の目まぐるしい変化に対応するには、グローバルな視点と幅広い教養が必須です。そんななか、「ビジネスパーソンこそ、最新の科学トピックスに親しんでいただきたい」と、作家で科学ジャーナリストの茜灯里さんは語ります。
地球環境、生命科学、宇宙、テクノロジーなど多岐にわたる科学技術分野のニュースを国内外の原著論文や背景と共に紹介するコラム連載をまとめた書籍『ビジネス教養としての最新科学トピックス』から抜粋、人気のテーマをいくつか紹介します。

オスだけを狙って殺す

東京大学大学院農学生命科学研究科の勝間進教授らの研究チームは、オスだけを狙って殺すタンパク質を同定し、メカニズムを解明したと発表しました。研究成果は2022年11月、オープンアクセスの学術誌『Nature Communications』で公開されました。

「Oscar」(オスカル:オス狩る)と名付けられたこのタンパク質は、昆虫の体内でよく見られる共生細菌のボルバキアが持つものです。

ボルバキアは感染した宿主(昆虫)の生殖システムに対して、オスのみの死、オスのメス化など、さまざまな操作をします。共生細菌と呼ばれていますが、宿主の性を自己の増殖に都合良く変化させる「性決定システムの乗っ取り」を行う「侵略者」とも言えます。

今回の研究と、ボルバキアの性状やその活用について概観しましょう。

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