ヤバい経済学 --日本にこそ必要な“ヤバい経済学”《宿輪純一のシネマ経済学》
最近、金融や経済をテーマとした映画が多い。これもリーマンショックからの世界金融恐慌のせいであろうか。この『ヤバい経済学』もその一本と言っていい。
原作は全世界でなんと400万部(!)も売れた超ベストセラー。作者は、経済学博士でシカゴ大学において教鞭をとるスティーヴン・D・レヴィットと、ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーで、レヴィットの説明をダブナーが書籍にまとめたもの(日本語版:『ヤバい経済学(増補改訂版)』東洋経済新報社 2100円)。
原題は『Freakonomics』(Freak+Economics : Freakとは変人等の意味)で副題には「A Rouge Economist Explores the Hidden Side of Everything」とあり、「風変わりな一匹オオカミのエコノミストがすべての裏側を調査する」といった感じか。
書籍も、映画も、であるが、今までの経済学の概念とは違う。筆者も経済学は長年勉強しているが、レヴィット先生は、今までの経済学に必須のものをすべてとっぱらって、人間の「インセンティブ」に集中し、世の中の間違った常識やインチキを因果関係から説明する。
書籍では多数のテーマが挙げられているが、映画では「大相撲の八百長はデータで証明できた」「子供は名前で人生が決まる」「ニューヨークで1990年代に犯罪が激減した理由」「賞金で高校生の成績が伸びるのか」「不動産業者が自分の家を売るコツ」という5つに絞られている。そして、それぞれのトピックごとにオムニバスのように監督を替えて製作している。それぞれわかりやすく、“エンタメ経済ムービー”と日本では副題を付けている。
(c)2010 Freakonomics Movie ,LLC
本書については、大相撲の八百長を見抜いていた点が日本で注目されていたが、筆者は特に「ニューヨークで1990年代に犯罪が激減した理由」に注目している。作者は中絶の合法化をその原因としている。つまり、米国では望まれない子供はきちんと育てられず、10代後半から悪の道に入っていくとしている(中絶そのものについてではなく、望まれない子供が減ることが大事としている)。そのため、中絶の合法化から十数年を経たあと、格段に犯罪が減ったと説明する。子殺しも劇的に減った。