海外で「日本食材卸」大手3社が絶好調の納得理由 売り上げは5年で倍増、日本食の「黒子役」が躍進

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今大人気なのはラーメンだ。アメリカに11店舗を構えるラーメンチェーン「一風堂」の現地店舗は、餃子やきゅうりなどのおつまみや、お酒を堪能した後に締めのラーメンを食べるといった楽しみ方をする客で賑わう。

一風堂を展開する力の源ホールディングスの広報は、「仲間と会話を楽しんで1時間ほど過ごす人も多く、客単価は日本より高い」と話す。ラーメンとともに他の日本食も楽しめる「ダイニングレストラン」のような店舗設計が、ラーメン文化の浸透を促進する。

「流行の火に油を注いで加速させる黒子役」

こうした日本食の広がりを陰で支えるのが、日本食材卸を手掛ける企業だ。

最大手のキッコーマンは、1969年に買収し、現在全米に21拠点を持つJFCインターナショナル社を通じて市場を開拓してきた。海外では外食を通じて日本食に触れる人が多く、食材卸の取引先は飲食店に偏る場合が多い。一方、キッコーマンの強みであるしょうゆやソースは小売店からも受け入れられやすく、JFCはこれを入り口に日本食材とセットで棚を獲得してきた。このためアメリカにおける同社の取引先は、飲食店と小売店で約半分ずつとなっている。

キッコーマンで国際事業本部長を務める茂木修専務は、この事業を「新しい流行の火に油を注いで加速させる黒子役」と表現する。

キッコーマンの茂木修専務。「流行を加速させる黒子役」を自認する(撮影:今井康一)

ラーメンのような主役が出てきたら、どんな商品を提供すれば流行が続きラーメン店が増えるか、例えばスープをより簡単に美味しく作れる素はできないかなどを仕入れ先と話し合い、取引先への提案やサポートを行う。JFCの取り扱いアイテムは1万点を超え、取引先の多様な需要に応える。

「追い風に乗るだけでなく、自ら動いて市場を作っていく」(茂木専務)

キッコーマンの海外売上比率は7割超と高く、同社に海外への「しょうゆ販売」のイメージを持つ人は多いだろう。しかし、実は海外売上収益の7割以上が食料品卸売事業で、しょうゆ販売を上回る規模になっている(2022年度)。

食材卸への参入が2010年と後発の宝HDは、M&Aでシェア拡大を狙う。今年に入っても、アメリカの日本食材卸会社3社を買収、現地企業を子会社化して、その販路を最大限活用する。これで同国の拠点数は13になり、将来的に約20拠点を目指す。

祖業の日本酒に強みを持つ宝HDは、酒類需要により飲食店からの引き合いが強い。そこで同社が意識するのは、取引先に必要な品物をワンストップで供給すること。日本酒や食材だけでなく、包丁や和食器、のれんなど1万点超のアイテムを取り扱う。日本食レストランを開業したい場合、同社を通せば一通りの物が揃う。

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