東大→ゴミ屋敷…どん底にいた38歳彼の劇的変化 親の仕送りで「酒とゲームと三昧」の20代を経て…

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今年からは犬を飼い始めた。その散歩を兼ねて、最寄り駅まで直人さんを送り迎えするのが和美さんの日課だ。「社会人になって初めてインテリジェンスを使って働いている」という直人さんは、40代新人ながら職場で大いに評価されつつ淡々と働いているらしい。そんな直人さんとの結婚生活を和美さんは絶賛する。

「精神的に病んでいた20代30代の頃と比べると、今は天国です。嫌なことを一切しなくていいので……。財布は私に預けてもらっていますが、家に夫と犬と一緒にいることが楽しいので家のことに少し使うぐらいです。買い物やデートスポット、海外旅行などは若い頃に行き尽くしました。新婚旅行は和歌山での4泊5日。それで十分です」

何をやってもうまくいかなかったけど

ただし、お互いに若い頃だったら今の結婚生活は難しかっただろうと和美さんは明かす。自分のことに必死すぎて、ささやかな日常を一緒に過ごせる相手がいることに感謝できなかったからだ。

「40代での晩婚だったから、お互いの欠陥を理解して補える関係性が築けていると思います。結婚して良かったね、2人なら何とかなるねと言い合っている日々です」

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直人さんの感想はもっと深刻である。結婚して初めて和美さんと一緒に迎えた年末年始で、「ほんの2年前は隔離病棟のテレビで紅白歌合戦をぼんやり見ていた」ことを思い出したのだ。あの頃はこんな幸せな未来が待っているとは想像もできなかった。自死の危険に怯えつつ、お酒を飲まない新しい自分を作っていかねばならかった。

何をやってもうまくいかず、焦燥感と自己嫌悪だけが高まるような時期が人生にはある。でも、あきらめずになんとか生活していれば、やがて風向きが変わる。思いがけない仕事やパートナーに恵まれたりするのだ。つらい経験のすべては今の幸せのためにあった、と思えたりする。直人さんと和美さんの組み合わせはまさにその一例である。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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