物流大手が「脱・多重下請け」へタッグを組んだ セイノー傘下「ハコベル」に出資が相次ぐ事情

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「パートナーとの協業やDXを中期計画の課題に掲げていたタイミングでの打診だったので、出資は2カ月で決定した。オープンに展開していく点にも賛同している。ハコベルを導入して、前倒しで計画を実行していきたい」(山九のロジスティクス・ソリューション事業本部の石渡教雄氏)。早速11月から、ハコベルの本格導入を進めていくという。

今回の3社出資は、セイノーの後押しもあって実現した面があるのは確かだ。ただしハコベルも、簡単に支援を受けていたわけではない。

ジョイントベンチャー設立からの1年間、セイノーの現場から「ハコベルは使える」という評価を勝ち取るために奔走してきた。営業担当者は全国の営業所を回り、勉強会を行い、極力対面で導入を支援。ネット企業らしからぬ泥臭さで関係を構築してきた。

ハコベルの狭間健志社長はこう語る。「結局、現場で大事なことは、売り上げを増やせるのか、新規開拓につながるのかということ。セイノーと協力して、とにかく現場レベルの事例を積み重ねてきた」。

具体的には、配送・集荷ルートの最適化を試算し、安価な提案で案件を獲得できた。取引先の緊急オーダーに対しては、ハコベルで委託して案件を獲得した。さらに顧客の見積もりに対し、ハコベルのWeb見積もりで即答し、その場で仕事を獲得した、など収穫は多かった。

並行してサービスも磨き上げた。以前からマッチング率は98%などと高水準だったが、登録するトラックが5万台超に増加したことで、前日15時までに予約すれば配車を100%保証するサービスも提供している。

数年先の上場を見据える

ハコベルの2023年5~7月期の売上高は13.1億円、営業損益は赤字だが、軽貨物のマッチングでは黒字を確保するなど改善も進んでいる。

今回、新たに株主となった3社でも「フル活用できる」との評価が得られれば、業界内での注目度は高まりサービスを広げるチャンスになる。「セイノーだけではなく、ほかでも再現性があることを証明する。BtoBに強い3社が使い倒してこそ評価される。数年先には株式上場も見据える」(ハコベルの狭間社長)と意気込む。

よりオープンな存在として業界にサービスを広げ、諸悪の根源である「多重下請け構造」を打破できるか。本当の勝負はこれからだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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