安倍政権の本質は、戦時経済への回帰である 野口教授、「ますますアナクロ化していく」
「政府の指導でなく市場が重要」ということは、アップルやグーグルなど、いまアメリカ経済を牽引している企業が、政府の援助で生まれたものではなく、市場の競争の中から生まれたことを見ても明らかです。
安倍政権はむしろ戦時体制に回帰している
ところで、「経済活動に対する政府の関与を強める」という考えは、戦時中に岸信介など「革新官僚」と呼ばれた人々が確立した、戦時経済体制の基本思想と同じものです。
安倍政権は「戦後レジームからの脱却」を唱えていますが、その経済政策の基本的性格は、「戦時経済体制への回帰」なのです。
ところで私は、岸らによって確立された戦時経済体制――私はそれを「1940年体制」と呼んでいます――を必ずしも否定しているわけではありません。その体制は、戦後もほぼそのままの形で生き残り、戦後の復興や高度成長、そして石油ショックへの対応において、大きな役割を果たしたと評価しています。それは、当時の世界経済と技術の条件が、40年体制的な経済構造に有利に働いていたからです。
しかし、1980年代頃から、基本的条件が大きく変化しました。中国が工業化し、IT(情報通信技術)が発展したために、市場経済の有効性が高まったのです。逆に言えば、40年体制的な経済の有効性が失われたのです。
1980年代後半のバブルは、そうした条件変化にもかかわらず、従来の経済体制を維持しようとしたことの結果であると解釈することができます。1990年代以降の日本経済の長期的停滞も、基本的には、日本人が40年体制的な考え方(大組織依存、政府依存)から抜け出せないためにもたらされているものです。
「政府が経済成長を主導する」という考えは、現代の世界ではアナクロニズムになっているのです。安倍内閣の経済政策に欠けている最大のものは、この歴史認識です。
正しい歴史認識を持ち、40年体制的な考えから脱却することができるかどうか、それが日本の未来を決めるでしょう。
(文中敬称略)
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