「解散命令請求」だけで統一教会問題は解決しない フランスや韓国の「組織的な人権侵害」への対応
フランスでは、複数の省庁関係者で構成した組織が、危険な団体の被害情報などを集約して対策を取っている。
韓国の国家人権委員会は、「立法、司法、行政のどこにも所属していない国家機構として誰からの干渉や指揮がされず、国家人権委員会法に定められた業務を独自に遂行する独立機構」とされている。
宗教団体だけではなく、企業やその他の組織における人権侵害をも警戒するべきものだ。たとえば、企業と行政とによって被害が認められない時期が続き、次々に裁判が起こされ、被害者救済が遅れてきた水俣病の事例や、長期間、創設者による人権侵害が継続してきたジャニーズ事務所の問題なども思い起こされる。
信教の自由をめぐって
旧統一教会の布教活動の違法性は、信教の自由を妨げてきたことも大きな要因であることを裁判所は示してきた。
郷路征記弁護士らが1987年に起こした「青春を返せ」訴訟は違法伝道訴訟ともよばれるが、2001年の札幌地裁判決で「信仰の自由や財産権などを侵害する恐れがある」として「正体を隠した布教」の違法性を認定されている。この判決は2003年に札幌高裁で控訴棄却、最高裁で上告棄却され確定している。
郷路弁護士は続いて、2004年に「信仰の自由侵害回復訴訟」を提起し、2012年に札幌地裁が違法伝道の判決を降し、2013年に札幌高裁で控訴棄却となっている。
この間に各地で違法伝道訴訟が行われ、「信仰を強要されない自由」や「強要する教団に国家が介入することの是非」が争われ、原告側の主張が認められてきた。
櫻井義秀『カルト問題と公共性――裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか』(北海道大学出版会、2014年)で、「信仰の自由の発露とはいえ、宗教的活動に無限の自由があるわけではなく、当然のこととして他者の自由を侵害しない限りにおいてという内在的制約が存在する」として、これらの違法伝道訴訟の意義を次のようにまとめている。
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