「解散命令請求」だけで統一教会問題は解決しない フランスや韓国の「組織的な人権侵害」への対応

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統一教会側からの証言はいくつもあるが、政府や国会による調査は断片的なものばかりで、その全体像を明らかにするような調査はまったく行われていない。今後の重要な課題と言わなくてはならない。

なぜ日本だけで被害が長期に及んだのか

さらに問われるべきは、なぜ、日本でのみ統一教会による人権侵害が、長期にわたって行われてきたのかということだ。統一教会は韓国、アメリカでの伝道に多大な力を注いだはずだが、そこでは大きな被害が長期的に生じるという事態には至っていない。これはヨーロッパやアジアの諸国でも同様である。

では、日本では次々と「カルト」教団が発生し、多くの被害が発生するような文化的土壌があるのだろうか。

確かに日本は新宗教が多い国である。人権侵害は伝統教団でも新宗教教団でも起こっているが、世界的には1970年代から1990年代にかけて「カルト」による人権侵害が目立つようになった。日本でもこの時期に多くの教団が人権侵害を起こして問題となっている。

オウム真理教が多大な被害者を生んだことは確かだし、明覚寺、法の華三法行などの事例もある。

だが、それらの被害は比較的、短期間に限られている。被害に対して社会が比較的早く対応したことで、摘発が進んだ事例と言えるだろう。

長期的に存続してきた教団といえばエホバの証人だ。エホバの証人は1970年前後には世界全体で数十万人だったが、今では800万人の信徒を擁するほどになっている。宗教2世問題が起こりがちな団体で日本からの告発が行われているが、世界各地でも児童虐待の問題が問われており、日本だけが特殊とは言えないようだ。

ここで、求められるのは、政治家と統一教会の深い関係がいつ頃からどのようにして進んできたのかという観点からの歴史的な解明である。

島薗 進 宗教学者、東京大学名誉教授

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しまぞの すすむ / Susumu Shimazono

日本宗教学会元会長。1948年、東京都生まれ。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒業。同大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。主な研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。著書に『宗教学の名著30』『新宗教を問う』(以上、ちくま新書)、『国家神道と日本人』(岩波新書)、『神聖天皇のゆくえ』(筑摩書房)、『戦後日本と国家神道』(岩波書店)などがある。近著に『教養としての神道 生きのびる神々』(東洋経済新報社)

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