好調ファミマが変えた広告代理店の「使い方」 ここ数年で販促手法に大きな変化が起きていた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした状況を変えたのが、2020年10月にCMO(最高マーケティング責任者)に就任した足立光氏だ。足立氏は日本マクドナルドホールディングスの業績回復の立役者としても知られる、マーケティングのプロ。足立氏は就任直後から、代理店との関係の再構築に動いた。

2021年3月には「イノベーション&アライアンス推進部」を新設。代理店を通さずに、版元に直接出向いてコラボ企画を提案する専門部署だ。同部署を通じてまず最初に実現したのが、サイゲームスの「ウマ娘 プリティダービー」とのコンビニ初となるコラボ。そして今年に入って、任天堂との相次ぐコラボを実現させた。

足立氏は「これで競合との遅れをかなり取り戻した」と手応えを語る一方、「これからはファミマにしかないコラボも進めていく」と語る。年末年始のキャンペーンには、日本のコンビニで初めて人気アイドルグループ、TWICEを起用する。地方競馬やプロレスといった「ニッチコンテンツとのコラボも強化し、独自色を打ち出していく」(同)。

広告代理店によるコンペを廃止

ファミリーマートが「広告代理店の使い方」を変えたのはこれだけではない。コラボ獲得では代理店依存から「内製化」を図る一方、代理店との関係強化にも取り組んでいる。

コンビニが販促を企画する場合、企画内容やCM制作、店頭掲示物など決定事項は多岐にわたる。これらを1つのパッケージとして、案件ごとに代理店によるコンペ(入札)を行い、内容や費用面で最も魅力的な提案をした代理店が案件をまるごと受託する、というのが一般的なやり方だ。

ファミリーマートに新しいマーケティング手法を導入する足立光CMO(撮影:尾形文繁)

ファミリーマートも従来はこの手法をとっていた。ただコンペには時間やコストがかかるうえ、案件の中でどこにどれくらいの費用がかかっているのかが不透明だった。そこで足立氏は2022年以降、代理店との契約方法を変えた。ポイントは大きく2つある。

1つ目はコンペをなくしたことだ。代わりに、パンの新商品キャンペーンはA社、増量キャンペーンはB社、プライベートブランドのリニューアルはC社という具合に、企画ごとに担当の代理店を固定した。こうすることで、コンペにかかっていた時間や費用を節約できる。代理店も自社が担当する案件の内容があらかじめ決まっているので、じっくり企画を練ることができるうえ、同じ案件を何度も担当する中で、より質の高い提案を行える。

2つ目は案件の分割だ。上述のように従来は案件全体をパッケージ化して、1つの代理店に委託していたが、新体制では1つの案件を①「企画」、②店内掲示物などを作成する「販促物制作」、③TVやデジタルなど広告媒体の購買を担当する「メディア」の3つに分け、各分野にかかっているコストを明確化。それぞれを別の代理店や取引先に委託する形式をとった。

【2023年10月28日23:00追記】③「メディア」についての表記を上記のように修正しました。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事