スパイ実務家が重視する人から情報収集する基本 情報技術が発達した今も人を介した情報は重要

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見破るためのアプローチ

①出す予定のない情報を出させる

相手との会話での沈黙や不満を示す仕草はわかりやすい例だ。沈黙や不満を示す仕草に不安を覚えた相手は、本来出す予定のない補足情報(=時に言い訳)を“間を埋めるため”に話すことがある。

また、不意な情報の要求や急を要する情報の要求も同様だ。この際に得た情報が嘘であればほころびが出やすい。咄嗟に取り繕った情報だからだ。

②真実と思われる事実と嘘だと疑っている事実を1度に説明させる

相手に嘘が含まれる情報を説明させた際、真実の情報より嘘が含まれる情報のほうが少なく説明されることが心理学における実験で示されている。よって、例えばAという事象とBという嘘が疑われる事象が含まれるXというストーリーについて説明させた際に、Bについては極端に説明の量が減る。

重要なのは、嘘を見破るために受動的になることなく自ら仕掛け、相手の変化を敏感に察知することだ。その変化が嘘を直接示すわけではないことにも注意したい。

「HUMINT」は社会生活でも活用できる

今回解説したHUMINTは、対人関係における本質を突く手法であり、我々の社会生活にも深く関与する。今回例示した手法について、特に関係を築くうえで意図的に使用することは“いやらしさ”が出てしまい、相手から敬遠されるだろう。自身に刷り込み、自然にできることが重要だ。

相手に対し“誠実”に向き合うことこそが、深い人間関係を築く答えなのだろう。

稲村 悠 日本カウンターインテリジェンス協会 代表理事

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いなむら ゆう / Yu Inamura

官民で多くの諜報事件を捜査・調査した経験を持つスパイ実務の専門家。元警視庁公安部外事課の捜査官として諜報活動の取締まりや情報収集に従事。刑事時代は、多くの強行事件を担当。警視庁を退職後、会計不正、品質不正などの不正調査業界で活躍し、民間で情報漏洩事案を端緒に多くの諜報事案を調査。さらに、大手コンサルティングファームにおいて経済安全保障関連、地政学リスク対応コンサルティングに従事した。現在は、日本カウンターインテリジェンス協会を設立、HUMINTの研究を行いながら、産業スパイの実態や企業の技術流出を防ぐ為、講演や執筆活動・メディア出演などの警鐘活動を行っている。

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