スパイ実務家が重視する人から情報収集する基本 情報技術が発達した今も人を介した情報は重要
HUMINTによる“欲しい情報”の引き出し方
HUMINTでは、まずターゲットを選定し、徹底的に調べ上げ、評価し、アプローチを図り、深い関係を構築し、情報を収集する。ちなみに、協力者とする際に契約書を締結する情報機関もある。
そのHUMINTによる良質な情報の収集において、特に重要な要素について解説する。
相手を知ることと同義であるが、まずは相手の立場や所属する組織の文化、国の文化を知ることが重要である。イメージとしては、本人を覆う外殻(例えば国や地域)の文化さえ知らなければ、本人が持つ文化の本質にはたどり着けない。
筆者の知人である他国の元インテリジェンス・オフィサーは、日本の協力者と接触する際には「謙虚を美徳とする」ことを意識していたという。また日本酒を好み、例えば日本で誰もが知っている有名な曲「川の流れのように(美空ひばり)」を歌えるように準備し、カラオケで流暢に歌ってみせると、ほとんどの協力者は親密に接してくれるとのことであった。
これを突き詰めれば、相手を知ることは非常に重要な要素となる。既に近い関係にある相手だろうと、相手を深く知ることは非常に重要だ。
インテリジェンスの世界では「ギブ&テイク」は必須である。ただし、ギブ&テイクは同時でなくてもよく、自らギブを先行させ、テイクを求めないといった謙虚な姿勢も時には重要だ。ギブするものは、情報や金、相手の悩みを解決するものなど有形無形を問わない。
また、テイクを受けることに慣れてしまい、改めてギブを返すことや感謝の意を示すことを疎かにしてはいけない。ギブ&テイクは、自身の誠実さを証明するツールでもある。
信頼関係が良質な情報をもたらし、相手との関係を持続可能とする。相手が裏切るのではないか。情報を漏らすのではないか。そういった不安を持たれるようでは信頼関係を構築できない。
日本における代表的なスパイ事件「ボガチョンコフ事件」では、白血病の子息を持つ日本人に対し、ロシアスパイ・ボガチョンコフは徹底的に寄り添い、日本人から多くの機密情報の提供を受けた。後に、日本人について、「家族といるよりも心が落ち着いた。家族のように思っていた」と述べている。
また、深い信頼は与えるだけではなく、自身も受けなければならない。文字通りギブ&テイクなのだ。
(※上記は、あくまでHUMINTにおける重要な要素を抜粋したものであり、本来は非常に多くの要素がある)
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