北野武新作「首」、プロが見た驚きの感想【後編】 「次回作への期待が膨らむ」その納得の理由は?

着々と映画的な「軍団」を築き上げてきた北野武監督
前回は北野武監督の新作『首』をめぐり、失敗作の理由について述べたが、今回はそれが「価値ある失敗作」であることの真意について考えてみよう。
まずはキャスティングの勝利によって、『首』は次回作への期待を膨らませることに成功していることが挙げられる。
かつて俳優・津川雅彦は、北野映画への批判を、「役者を育てもせずに」と嫌みたっぷりに語ったものだ。
だが、出来上がった俳優を集めて映画を撮ることは、撮影所システムとはまったく別の場所から出てきた、このたぐいまれな映像作家にとって、自明の条件にすぎなかっただろう。
ただ、監督に予定されていた深作欣二のスタッフを引き継いで撮った処女作『その男、凶暴につき』(1989年)以後、北野は着々と映画的な「軍団」(北野組に加わることは今や俳優のステータスになっている)を築き上げてきた。
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