イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか

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ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。

まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。

そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない。

民主国家から「ユダヤ人民族国家」に変質

イスラエルの「建国宣言」(1948年)や基本法の「人間の尊厳と自由」(1992年)には、すべての国民に開かれた「民主国家」「人間の尊厳と自由を守る」などと書かれている。それと比較すると、ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。

ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める。

ここ数年、大きな武力衝突がないことから、アメリカ国務省関係者らからは「こんなに静かな中東は久しぶりだ」などという声が出ていたが、一方で少なからぬ専門家が「大規模な軍事衝突はいつあってもおかしくない状況だ」と論じていた。

残念なことにその予想が当たり、10月7日に悲劇が起きてしまった。

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