イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか

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ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。

最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。

これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない。

司法制度改革が招いた政権批判がかき消えた

当然のことながら、政権の司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。

さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。

司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した。ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。

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