ホテル佐勘は、あの震災をどう乗り越えたか 平安時代に創業した「のれん」の守り方

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私は従業員に毎月、「勘三郎コミュニケーションズ」というペーパーを出して読んでもらっています。「こうして欲しい」とか「こうしなさい」といった話ではなく、月々に「こんな失敗があった」「ここは成功した」「これはこんな風に考えたらどうか」といった感じで活用しています。社長になって10年近くになりますが、ペーパーを毎月出す中で私自身の環境や考え方の変化を読み解いてもらえれば、私と従業員との目線が合うかなと思います。

伝統的な日本旅館の火を消さない経営をしていく

――最近の旅行業界全体の動向、競争環境についてはいかがですか。

もともと旅館業は地域に根ざす事業ですが、今までは地元の小さな企業が地元産業として動いてきました。ここにきて大きなチェーンが席巻して、全国同じようなスタイルで営業するところも増えました。さらに外資がスポンサーになるところも出てきました。私たちは、そうしたところに負けないよう足腰を鍛え、伝統的な日本旅館の火を消さないように、ひな祭り、節分など日本旅館しかできない伝統文化の紹介をしていきたい。日本文化を大事にしながら、クオリティの高い旅館経営をしていきたいと思います。

――長く続く会社としてその秘訣は何ですか。また会社として目指している将来像は。

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わが社も企業になりました。現在、従業員だけで300人近くおります。これから先、人口が減るばかりの日本だけで商売して本当にいいのかとも思います。インバウンドはここ1~2年のうちに1500万人はいくと思いますが、インバウンドだけでは足腰が弱くなります。

多角的に経営しながらいくつかの柱をもって商売するのがリスクヘッジにはいちばん正しいのかと考えると、今後は旅館・ホテルの海外展開といったことも考えないといけないなと思っています。

今後はグローバル化する社会に上手に適応しながら、私たちもその波に乗り、本社が外国に移ってもいいような形でしなやかな経営をしていくのが、私たちの目指す将来像です。

中村 宏之 読売新聞記者
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