ホテル佐勘は、あの震災をどう乗り越えたか 平安時代に創業した「のれん」の守り方
――御社の業績動向などはどんな特徴がありますか。東日本大震災後の宿泊動向の変化や外国人訪日客の増加による影響は。
震災前後に共通しますが、秋保温泉は地元比率の高い温泉でありまして、当社も仙台から来られるお客様が39%、仙台以外の宮城県からいらっしゃるお客様は6~7%ということで、ほぼ半分が宮城県内からのお客様です。残り25%が首都圏の方々、残り25%がそれ以外というお客様の構成だと思います。
私どもとしては、仙台市が大きくなるにつれて支店経済から徐々に全国区の経済圏に移行する中で、こうした現象が起きたと思いますが、どちらかというと観光のお客様というよりは、財界のお客様や企業関係のお客様が比較的多いです。
これはたぶん都市圏に近い温泉地ということで、札幌における定山渓とか、神戸・大阪の有馬温泉と同じような状況ですが、ほかの温泉地と比べると観光や療養といった方々よりも企業需要が多いという言い方ができます。併せて1泊2食の宿泊にかかわる売り上げよりも、日帰り、昼食といった需要が多い。一般的に平日で50~60人、土日で100~200人ぐらいに伸びますので、大都市に近い温泉地という特徴を示しています。
「観光地として自力で進まなければならない」
現在はピーク時より15%減の85%ということで、温泉地としては健闘していると思います。これは震災後に全国のたくさんの方々が東北にお越しくださった下支えの結果もあっての数字だと考えています。2011年の震災後はさすがに大きく落ち込みましたが、その後はそうした善意の方々にお越しいただいたこともありまして、大きな支えとなりました。これからは自力で進まなければいけないという思いもありまして、震災から抜け出して観光地として生きていけるような道のり、企業にきちんと選んでもらえるような取り組みをしようと考えています。
外国人訪日客(インバウンド)については、宮城県は秋保温泉も含めて震災前の来客数を大きく割り込んだままです。私どもはせめて震災前の半分以上には戻ってもらいたいと思っていますが、なかなか厳しいです。
――社長の経営哲学はどんなことを大切にしておられますか。
経営方針の表明は年に大きく2回の社員大会で行っています。8月の社員大会と1月の年始会です。変化にずっと対応していくことが大事だと言われてきていますので、状況を見ながら、また、上手に形態を変えながら進んでいこうと考えています。私は朝礼暮改でもかまわないと思っています。変化に対応することをいとわないということです。
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