「書店減少」嘆くのにネットで本買う日本人の矛盾 格差拡大の「真犯人」は僕たち自身かもしれない
市場経済によって淘汰されているだけだという人もいるが、僕はそうではないと思っている。お金と社会の仕組みについての僕らの認識が甘いことが大きな原因なのではないだろうか。
僕たちは「お金」を通して社会とつながっている
僕が今回書いた『きみのお金は誰のため』という小説の中には、福田書店という街の書店が登場する。
このシーンは、現実の世界で起きている2つの事実を描いている。
1つは、書店の経営状況。この福田書店の空間や時間は、主人公の優斗(中学2年生)をはじめ、街の人に愛されているにもかかわらず、経営状況が悪化している。
もう1つは、本棚に並ぶお金の本。以前はタブー視されていたお金の話だが、最近、お金の勉強がブームとなっている。ところが、そこで学ぶのは、お金の増やし方や節約術といった、財布の中のお金の話がほとんどだ。財布の外の話、つまりお金を通して社会とどうつながっているかを学ぶ機会はあまりない。
これこそが、書店の経営が追い込まれている原因である。僕たちは、自分たちの選択の重大さを考えているだろうか。書店の話だけではない。格差を作っているのも、僕たち1人ひとりだ。
別のシーンで、七海という金融で働く女性が、格差問題を取り上げている。
こういう格差社会の話になると、悪者は決まって“資本主義”になる。2021年世界の長者番付の1位は、ジェフ・ベゾスだった。
ジェフ・ベゾスはアマゾンの創業者で大株主。言うまでもなく、アマゾンは、ネット通販の会社として最大手だ。
果たして、彼が大金持ちになったのは資本主義のおかげなのだろうか。いや、そうではない。僕たちの財布が社会とつながっているということを忘れてはならない。彼を1位に押し上げたのは、まぎれもなく僕らのワンクリックだ。僕たちの行動が、どれほど社会に関与しているのかがわかるだろう。
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