意外と知らない「人種」という概念が広がった経緯 「科学的人種論」は否定されても残っている差別

人種は人間が発明した 「人種」概念の誕生(1684年)
紀元前5~4世紀 古代ギリシアの医師ヒポクラテスが、地理的要因は人の見かけや気質に影響を与えると書いた。
1956年 ノアの息子ハムは呪われて黒い肌で生まれ、奴隷になったとする「ハムの呪い」を、米国の牧師マーティン・ルーサー・キングが「神への冒瀆」と切り捨てる。
民族の違いに関する記述は古代ギリシアやローマの時代からあるが、現在のような「人種」概念が発達したのは過去4世紀ほどのことだ。英語の人種(race)という語はイタリア語のrazza(共通の祖先をもつ人々)に由来する。英語で使われ始めたのは16世紀の前半、いわゆる「科学革命」で動植物の分類が盛んになった時期だ。その目的は自然界への理解を深めることにあった。
その分類を人間にも適用したのが、フランスの医者で旅行家でもあったフランソワ・ベルニエだ。1684年の論考「各地に居住する種または人種の違いによる世界の新たな分類」で、彼は居住地域と身体的特徴にもとづいて人類を4つの「人種」に分けた。そのうち3人種については、肌の色の違いは(昔からの経験知にもとづいて)日光を浴びる程度の差によると考えた。しかしサハラ砂漠以南のアフリカ人の「黒さ」は生得的なものとした。
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