2つめの特徴は、ポートワインの製造方法にある。ポートワインは同じポルトガルのマデイラワインとスペインのシェリーに並ぶ「世界3大酒精強化ワイン」の1つだ。
酒精とはアルコール(多くはブランデー)のこと。醸造工程中に酒精を添加することで、アルコール度数が高く、味にコクがあり、保存性の高いワインとなる。通常のワインのアルコール度数が10~14%に対して、酒精強化ワインは15%以上、ポートワインはなかでも高く、19~22度と決められている。
「足踏みワイン」が今でも
筆者がヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの老舗ポートメーカー「テイラー(TAYLOR’S)」を訪ねると、「ポートの虜になって約30年」という広報担当のアナ・マルガリーダ・モルガドさん(55)が迎えてくれた。数日前に、アルト・ドウロで昔ながらの足踏みでのワイン造りに参加してきたという。
今もそんな方法でポートを造っているのかと驚くと、「大部分は、もちろん機械化されているわ。ただ、最高級のブドウだけは今も人が破砕しているの。すべて自然酵母だけど、あっという間にぷくぷくとアルコールが増えて、1時間も作業すると足がかゆくなるのよ」と教えてくれた。
通常のワインと違い、ポートのブドウは糖度が非常に高いため、発酵が急激に進み、3日ほどで糖分の約半分がアルコールへと変化する。アルコール度数が一定量を超えると酵母は殺菌され、発酵が止まる。すると、アルコール度数が高く、果汁の糖分を残した甘く濃厚なワインが生まれるのだ。この原理がポートワインの神髄である。
ポートメーカーは、糖度とアルコールのバランスが最適となったタイミングで、アルコール度数77%のブランデーを追加して発酵を止めることで、ベストな状態のポートワインを生み出しているのである。
アナさんが「ポートワインの王様」と呼ぶ「ビンテージ・ポート」は、10年に何回あるか、といった当たり年のブドウで作られた最高級ポート。透明感のあるキラキラと輝く赤色も、その魅力の1つだ。
ヴィンテージポートの価格は通常100ユーロ(約1万6000円)程度。1985年のものは260ユーロ(約4万1000円)程度だ。「それでもシングルモルトなんかに比べると破格の安さだと思うわ」とアナさん。
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