消費量「世界一の国」が愛する"緑のワイン"の正体 地元では「赤い」緑をコーヒー代わりに楽しむ

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緑のワインの主流は、微炭酸で低アルコールの若々しくフルーティーな白ワイン。価格もコカコーラの2倍程度、3ユーロ以内からと求めやすく、地元っ子が暑い日に海やプールサイドで飲むならこれ、という存在である。

ヴィーニョ・ヴェルデ協会広報担当のジョアンさん(33)は、「若いブレンドだけでなく、いろいろなワインがあることを知ってほしいんだよね」と、2021年以前の4種類のヴィーニョ・ヴェルデを注いでくれた。

例えば、アザルとアリントをブレンドした2018年のビオワイン。フルーティーというよりもミネラル分が強くて甘くない。ヴィーニョ・ヴェルデのなかではプレミアム商品で、20ユーロ(約3200円)ほどだという。

「フランス、イタリア、ドイツといった国のワインだったら、この値段じゃとても買えない品質でしょう?」とジョアンさんは胸を張る。

実は「赤」もある緑のワイン

「緑のワイン」の「赤」もおねだりして飲ませてもらった。

生産地ではバーベキューなどに合わせるらしい。伝統にのっとって陶器のカップに注がれた紫色に近い赤ワインの風味は、ブドウジュースのような甘さと香り、それからはっきりとした渋みと酸味も感じられるというワインとは思えない鮮烈さで、目を丸くしながら何度も味わう筆者に「すべてが強烈で、めちゃくちゃなワインでしょ? でも、なんとも言えない魅力があるんだよね」とジョアンさん。

「僕のじいさんはヴィーニョ・ヴェルデ地域の北部でこのブドウを作っていたんだけど、地元のカフェではみな外のテーブルでコーヒー代わりにこいつをカップで飲んでたよ」と教えてくれた。「歯なんか紫になっちゃうんだけどね、誰も気にしない(笑)」。

グラスではなくカップで飲む「赤い」緑のワイン(写真:筆者撮影)

ヴィーニョ・ヴェルデの代名詞ともいうべき微発泡の若い白ワインは魅力的だが、熟成したワインやユニークな赤などもあって、ポートワイン同様こちらも奥が深い。

ジョアンさんは、毎日のように何本もの緑のワインをテイスティングし、ときには厳しい評価で生産者に疎まれても、「ヴィーニョ・ヴェルデ」ブランドを守り、世界中に知ってもらおうと努力している。

その活力源となっているのは、ヴィーニョ・ヴェルデの美しい自然と「ホスピタリティーにあふれ、すべてを差し出してもてなしてくれる」というこの地でワインを造り続けてきた生産者たち。

「僕たちが誇る緑のワインを世界中の人に味わってもらいたい」そうだ。

東リカ(海外書き人クラブ) ポルトガル在住ライター

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ひがし りか / Rika Higashi

ブラジル、アメリカを経て2023年夏よりポルトガル在住のフリーランスライター&マーケティングリサーチャー。2022年末にはオレゴン州ポートランドのユニークな職業人を取材した「好きなことして、いい顔で生きていく ~風変わりな街ポートランドで、自分らしさを貫く15の物語~ 」を上梓。得意分野は、旅行、グルメ、お酒、アート、アウトドアなど。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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