地方の衰退を招く「3つの重大な間違い」とは なぜ計画を立て目標管理しても失敗するのか

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では、残念ながら大半の地域が陥っている、このような「負のループ」に入った際に、抜け出す方法はあるのでしょうか。重要なのは、失敗に支配されて、投げ出さない、諦めてしまわないことです。

「問題」を「チャンス」と捉えた取り組みを発展させる

地方の方々と再生事業に取り組むとき、私たちは、どのような過酷な状況下でも不死鳥のように立ち上がって事業と真剣に向き合う「熱い人々」が、地方に多数いることを知っています。

実は、行政の構造を一気に変えることに力を注ぐよりも、民間が行政計画とは関係なく、まちなか再生などでも活躍をして、それを一人の市民として行政マンも支え、それが成果を収めていくうちに、自治体を動かし、行政の戦略へと昇華していくことだって多々あるのです。

以前も一言触れましたが、例えば、建物の空き家が多く老朽化が進んでいる、ということを問題視せず、むしろチャンスだと捉え、空き家を活用して300人以上の雇用を生み出している北九州市の小倉地区もそうです。

また、通行量が減っていくことを問題視せず、むしろ道路の空間が空いて使えるようになったととらえて「すわろうテラス」を経営している札幌大通地区もそうです。山が荒れていくことを嘆くのではなく、栗製品市場を開拓して昨今では栗林の植林につなげている、高知・四万十町の取り組みも同様です。

これらの取り組みには、自立した民間が「稼ぎ」と真剣に向き合い、新たなまちの変化を興そうとする行政が、規制緩和などの権限を行使したり、時に公務員がボランティアなどでの協力もしながら、ちゃんと「身の丈」で事業を作り出しています。

「戦略の問題を、戦術によって克服することはできない」という言葉があります。だからといって、問題を抱えている地域が、自治体の掲げる戦略に沿わないことをやってはいけないわけではありません。間違った戦略が大半だったりするのですから。

間違った戦略選択をしていることが明らかなら、自治体の方針とは異なる取り組みを行って、地域に新たな活力を生み出すという選択肢があることを忘れてはいけません。いくら「うちの自治体がダメだ」と嘆いても変わらないのです。

最初は難しいかもしれませんが、むしろ自治体の戦略を「完全無視」をしてでも、自分たちが必要であるという取り組みを小さく始め、実績をあげていくことこそが変化につながります。 

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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