「30年ぶり高水準」でも春闘賃上げはまだ足りない 連合は今春を上回る「5%以上」を要求する構え

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Q5:実質賃金がプラスになるために必要な賃上げ率とは?

A:物価上昇率が2%なら、定期昇給込みで4~4.5%程度

名目賃金は増えているが、消費者物価上昇率がその伸びを上回っていることから、実質賃金上昇率は2022年4月から1年半にわたってマイナスが続いている。

消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は、2022年4月以降、日銀が物価安定の目標とする2%を上回って推移しており、2023年1月には4.2%と約40年ぶりの高水準となった。その後は、政府の物価高対策(電気代、都市ガス代、ガソリン、灯油等の価格抑制策)の影響などから伸び率が鈍化し、2月に3%台、9月には2%台となった。

先行きについては、足もとの輸入物価下落を受けて、原材料コストの上昇を価格転嫁する動きが弱まることから、食料品をはじめとした財価格の上昇率は鈍化することが見込まれる。一方、賃上げによる人件費の増加を価格転嫁する動きが広がり、サービス価格の上昇率が高まることから、消費者物価上昇率は2023年度末頃まで2%台の推移が続きそうだ。

実質賃金上昇率がプラスに転じるのは、2024年の春闘賃上げ率が2023年並みとなることを前提とし、物価上昇率が1%台まで低下することが見込まれる2024年度入り後と予想する。

豊かになるには物価上昇を上回るベースアップを

2024年は2023年に続きベースアップで2%程度の賃上げが実現しそうだが、中長期的にはもう少し高い賃上げ率を目指すべきだ。

仮に、消費者物価上昇率と賃上げ率がともに2%の場合、実質賃金の伸びはゼロとなる。それ以外の条件が変わらないとすると、実質賃金が伸びなければ、個人消費は現状維持で、経済は成長しない。

毎年少しずつでも豊かになるためには、ベースアップが物価上昇率を上回ることが必要であり、1990年代半ばまではこれが実現していた。

物価安定の目標が2%であることを前提とすれば、ベースアップで2.5~3%程度、定期昇給込みで4~4.5%程度が中長期的に目指すべき賃上げ率と考えられる。

斎藤 太郎 ニッセイ基礎研究所 経済調査部長

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さいとう たろう / Taro Saito

1992年京都大学教育学部卒、日本生命保険相互会社入社、96年からニッセイ基礎研究所、2019年より現職、専門は日本経済予測。日本経済研究センターが実施している「ESPフォーキャスト調査」では2020年を含め過去8回、予測的中率の高い優秀フォーキャスターに選ばれている。また、特に労働市場の分析には力を入れており、定評がある。

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