「30年ぶり高水準」でも春闘賃上げはまだ足りない 連合は今春を上回る「5%以上」を要求する構え
A:組合側が要求しなかったから
振り返ってみれば、アベノミクス景気の頃から賃上げをめぐる環境は良好だった。それにもかかわらず2022年まで賃上げがほとんど行われなかった一因は、組合側の要求水準が低かったことだ。
経営者に積極的な賃上げを求める向きもあるが、そもそも経営者の重要な任務は自社の収益を最大化することである。経営者にとっては、なるべく賃金を上げずに働いてもらうほうが望ましい。賃金を上げなければ従業員が辞めてしまう、労働組合から厳しい賃上げ要求をされる、といった状況になって、やむなく賃上げに踏み切るのだ。
「脱デフレ」だけでは実質賃金が目減り
連合傘下組合の賃上げ要求と実績の関係をみると、バブル崩壊後で景気が悪かった1990年代後半でも賃上げ要求は4%以上で、実際の賃上げ率は3%前後となっていた。
その後は雇用情勢が厳しさを増す中で、組合が賃上げよりも雇用の確保を優先したこともあり、定期昇給分(ベースアップなし)に相当する1%台後半から
アベノミクス景気が始まった2013年以降、過去最高益を更新する企業が相次ぎ、企業の人手不足感が大きく高まるなど、賃上げをめぐる環境は大きく改善した。しかし、賃上げ要求は3%程度、実際の賃上げ率は2%程度にとどまっていた。
賃上げ要求水準が上がらなかった背景には、デフレマインドが払拭されていなかったことがある。デフレ期にはベースアップがなくても物価の下落によって実質賃金が上昇した。
2013年の異次元緩和開始以降、少なくともデフレではなくなり、賃上げがなければ実質賃金が目減りするようになった。しかし、デフレマインドが根強く残っており、賃上げの重要性が十分に認識されることはなかった。
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