「30年ぶり高水準」でも春闘賃上げはまだ足りない 連合は今春を上回る「5%以上」を要求する構え

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2022年以降は消費者物価が一時約40年ぶりの高い伸びとなり、賃上げがなければ実質賃金が大きく目減りしてしまうことが誰の目にも明らかとなった。こうした中、連合は2023年春闘の賃上げ要求を2015年以降掲げてきた4%程度(定期昇給相当分を含む)から5%程度に引き上げ、連合傘下組合の実際の要求も前年の2.96%から4.49%へと大きく上昇した。

この結果、最終的な賃上げ率も3.60%(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)と30年ぶりの高水準となったのである。

Q3:2024年の春闘はどうなるのか

A:2023年に続いて3%台後半を予想

企業収益が堅調を維持し、物価上昇率が高止まりしていることから、賃上げをめぐる環境は2023年に入ってさらに改善している。現時点では、2024年の賃上げ率は2023年に続き、3%台後半になると予想している。連合が要求水準を引き上げたことを踏まえれば、2023年を上回る可能性もある。

Q4:実際の賃金は春闘の賃上げ率ほど上がっていないのでは?

A:定期昇給を除いたベースアップが賃金上昇に対応する

2023年の春闘賃上げ率は3.60%だが、賃金統計(厚生労働省「毎月勤労統計」)の賃上げ率を見ると、1人当たりの現金給与総額は2023年4月から8月の平均で前年比1.7%にとどまっている。春闘と実際の賃上げ率は必ずしも一致するわけでなく、両者を比較する場合には、注意すべきことがいくつかある。

賃上げ3.6%ならベースアップは2%程度

まず、一般的に賃上げ率の指標として用いられる数字は、定期昇給を含んだものであることだ。

個々の労働者に焦点を当てれば、その人の賃金水準は平均的には毎年定期昇給分だけ上がっていく(年功賃金体系の会社の場合)。しかし、毎年高齢者が定年などで退職する一方で、若い人が新たに働き始めるので、労働市場全体でみれば平均年齢は変わらない(厳密には高齢化の分だけ少し上がる)。

したがって、労働市場全体の平均賃金上昇率を考える際には、定期昇給分を除いたベースアップを見ることが適切だ。2023年の春闘賃上げ率は3.60%だったが、定期昇給は1.5~1.8%程度とされるため、ベースアップは2%程度となる。

また、春闘賃上げ率のベースアップは一般労働者(いわゆる正社員)の所定内給与(基本給)におおむね連動するが、賃金水準が相対的に低いパートタイム労働者の割合が高まっていることが平均賃金の押し下げ要因となっている。

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