死者4万人も「ガザ侵攻」で危ぶまれる凄惨な展開 「宗教戦争」と化したパレスチナ紛争の行方

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イスラエル指導部は国民感情を考慮する必要があり、ハマスやイランなど敵対勢力に囲まれたイスラエルにとって抑止効果を得るためにも報復的な大規模軍事作戦は不可避だろう。

イスラエル側では1400人以上が死亡、パレスチナ側ではイスラエル軍の空爆で2200人以上が死亡した。筆者がエルサレムに通信社特派員として駐在していた際には、イスラエル人1人の犠牲に対してパレスチナ人100人が殺害されると象徴的に語られていた。

実際、2008〜2009年にイスラエルがガザ地区に侵攻した際には、イスラエル人の犠牲が9人だったのに対し、1400人近いパレスチナ人の死者が出た。これは倍返しどころか150倍返しである。2014年のガザ侵攻時にはイスラエルの死者が73人だったのに対して、パレスチナ人約2250人が死亡した。これは約31倍に相当する。

今回の衝突による犠牲者数はうなぎのぼりだが、2014年の比率を当てはめると、停戦までに計4万人のパレスチナ人が命を落とす計算になってしまう。こうした数字は机上の空論であり、実際にはイスラエルに対する国際社会の批判の高まりや、ヨルダン川西岸への騒乱波及、ガザ地区に連れされた人質をめぐる交渉、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラやイランの参戦可能性など複雑な要素が絡んでくるだろう。

プーチン大統領が停戦の仲介に意欲

すでに世界各地でガザ地区での犠牲拡大を受けて親パレスチナのデモが行われたほか、中国の王毅外相は「自衛の範囲を超えている」とイスラエルの軍事行動を批判した。

ロシアのプーチン大統領がイスラエルの首脳や中東首脳と電話会議を行い停戦に乗り出しているほか、アメリカのバイデン大統領も近くイスラエル訪問する予定だ。

イスラエルは国際社会の世論よりも国益を重視する傾向が強いが、ヨルダン川西岸での騒乱拡大やヒズボラの参戦など2正面作戦を強いられる場合、ガザでの地上侵攻作戦は長期化するとの見方もあり、イスラエルは厳しい状況に陥る可能性がある。

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