困窮子育て家庭「1カ月の食費1万円未満」のリアル 物価高で肉や魚を買えず、1日2食になる家庭も

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「賃金が上がらない中、物価だけものすごく上がっていて本当に苦しい状況です。光熱費や食料品が値上がりすると食費を削るしかない。肉や魚を買えなくなり、一日3食を2食にして、子どもにお腹いっぱい食べさせられない。本当にここは日本かと思うような状況です」と渡辺さんは語る。

今夏に食料支援を受け取った子どもたち(写真提供:認定NPO法人キッズドア)

支援では企業からの協力を得ながら、お米や冷凍品などを2367の家庭に配送した。かかった費用は食材費と送料だけで約1650万円、そのほとんどは寄付で賄われている。

支援を受けた保護者からのメッセージの中には「学童や高校の補習に行かせるためのお弁当が用意できない」というものもあった。渡辺さんはこう続ける。「食べ物が用意できないことで学びの機会や子どもの居場所が奪われていき、結局家にいるしかない。食べ物がないために子どもが学びの場から排除されていくことが、現実として起こってしまっている状況です」

回転ずしや映画鑑賞の「体験イベント」

この夏、キッズドアは子どもたちに体験イベントも提供した。コロナ禍では一般世帯も困窮世帯も遠出を控えていたため、子どもたちが夏休みの体験格差を肌で感じることは少なかった。

しかしコロナが5類に移行し、行動制限がない夏休みを迎えることになった。困窮家庭の子どもたちの体験格差を少しでも解消しようと、約3500名の保護者と子どもたちに体験イベントを提供した。

イベントの中には、回転ずしのチケットやミュージカル・映画鑑賞チケットなどの提供、千葉にある自然パークへのツアーなどがあった。回転ずしに行った保護者からは「約5年ぶりに行き、子どもと一緒にお腹いっぱいお寿司を食べることができました」との声があった。

また映画を鑑賞した保護者からは「子どもが多く大変な出費となるので毎年諦めさせていたが、本当は行かせたかった。心から感謝しています」とのメッセージが寄せられた。そして自然パークに行った家庭からは「大自然の中で一日過ごすことができて、すてきな夏休みの思い出ができました。一生忘れることはありません」とのメッセージも届いた。

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